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広告コピーの中には、ストーリー性が強く、
詩や短編小説のような世界観で綴られたものがあります。

コピーライターは、その物語をどうやって書いたのか。
ふだん何を考え、何を思っているのか。
その「舞台裏」をご紹介します。

もしかすると、小説よりおもしろいと思える広告コピーが
この中で見つかるかもしれません。

第六回の物語

ママが映画館に
通える国ってすてきでしょ?


子育てに、土日はない。
昼休みもない。祝日もない。
夜だって、子供が泣けば、勤務時間。
いつ子供がグズりだすかわからないから、
ゆっくりおでかけも楽しめない。
でも本当は、たまに映画館に寄ったりして、
笑ったり、泣いたり、感動したりする時間が、
いちばん必要なのは、
そんなママたちではないでしょうか。
小さな感受性を育てていく、
大切な大切な仕事をしているのだから。



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【TOHOシネマズ「ママズクラブシアター」のポスター】
コピーライター, クリエイティブ・ディレクター:こやま淳子
アート・ディレクター:不破朋美
デザイナー:大沼真紀
フォトグラファー:日下雅貴
プロデューサー:山田博之 / 芝村 至


第六回の舞台裏


友人へのヒアリングから生まれたコピー

「この仕事は、元同僚が声をかけてくれて担当することになりました」

東日本に展開する映画館「TOHOシネマズ」のポスターについてそう語るコピーライターのこやまさん。彼女が広告代理店から独立して1年目、すでにTOHOシネマズに転職していた元同僚が、この仕事のクリエイティブ・ディレクター兼コピーライターに指名してくれたのだ。

「独立したばかりだったから、安く使おうっていう魂胆だったみたいです(笑)。でもこのサービスに共感してくれたスタッフが、みんな喜んでやってくれたので、本当に低予算だったけど、楽しい仕事になりました」

またこのコピーを書く際、ある経験がとても参考になったという。


「私はママではないので、彼女たちの気持ちをよく分かっていませんでした。でも、ある日専業主婦の友だちが、朝の5時から夜中の12時まで子どものための用事でびっしり埋まっているスケジュールを見せてくれて(笑)、本当にびっくりしました。」


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前回のプラン・ジャパンと同様、この広告コピーも多くの反響があり、「またびっくりした」とこやまさんは笑う。「ママでも映画を観られる」というただの「情報」ではなく、「感受性を育てるママにこそ映画が必要」という新しい「提案」を優しく語りかけるこのコピーに、人は共感し、惹きつけられるのだろう。



「分からない」からコピーライターに

「最初は3年くらい編集プロダクションで働いてから、独立してフリーライターになりたいと思っていました」

と語るこやまさんは社会人1年目、希望通り編集プロダクションに入社する。

「もともと文章を書く仕事がしたくて、編集ライター志望でした。ちょうど就職氷河期真っただ中で、留年もしていたし(笑)、ちゃんとした会社に入れないんじゃないかって漠然とした不安があって。「なら自分で技術を身につけて会社に頼らず生きていこう」と思い、とにかく編集プロダクションをいっぱい受けて最初の会社に就職しました」

そこで約2年半、ムックの編集や少年誌の屋外広告、ポスターなど、さまざまな仕事を担当する。そこでの経験がこやまさんにとって転機となる。


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こやまさんの本棚。
好きなマンガや本以外に、当時編集したムックも並ぶ。


「当時は「ライター」と「コピーライター」の2つの名刺を持っていました。で、ライターとして長い文章に上司から赤字を入れられる時は、何が間違っているかは分かるんです。でも、コピーライターとして上司から赤字を入れられる時、何で悪いのかが分からなかった。だから、分からない方に進みました…というか引き込まれた感じです。流れもあったのかもしれません。途中で何回も「編集ライターやってたらどうなっただろう」と思ったけど(笑)」



「生き方」が「書き方」

その後、外資系広告代理店、博報堂を経て、2010年にコピーライターとして独立。今も着実に実績を上げつづけているこやまさんは現在、広告の仕事の他に本も出している。

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こやまさん著「choo choo日和」。カレンダーもある。


「広告は商品情報やクライアントさまの意見など、いろんな制約の中で書くので、その制約の中で期待に応えるというやりがいがあります。また、本は自分が表現したいことや、広告では許されないちょっとしたネガティブな表現も使えるので、その楽しさがあります。広告をやっていたから本が楽しめるし、本をやっているから、広告の良さもあらためて見直すことができますね」

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本をつくっていた時のノート


「両方楽しくて、両方難しい」と語るこやまさん、実は仕事を始めてから1つ変わったことがあるという。

「学生時代は「気の合う人」とだけ話したり遊んだり、付き合いを限定していましたが、社会人になってから「いろんな人」と話すようになりました。私は女性向けの仕事が多いので、特にいろんな女性と意識して話すようにしています。広告業界だけじゃなくて、20代の子と飲みに行ったり。ネイルサロンも、全然しゃべってくれない人が担当のお店には行かずに、話が弾む人のお店に通っています(笑)。もちろん、いつも市場調査って気分でいるわけではなく、できる範囲でですけどね」

「独立する」という意志を貫きながらも、一方で時の流れに身を任せ、「編集ライター」から「コピーライター」へとシフトし、独立後も活躍するこやまさん。メッセージの強さと表現の優しさを兼ね備えたこやまさんの文章は、「ぶれない」と「委ねる」を両立した彼女の生き様そのものなのだ。




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こやま淳子(こやま じゅんこ)
1995年早稲田大学卒業後、編集ライター兼コピーライターを経て、コピーライター一本に。博報堂を経て、2010年独立。さまざまな分野のコトバを生み出す仕事に従事する。TCC新人賞、FCC賞、毎日広告デザイン賞などを受賞。著書「choo choo 日和 愛のマタタビ。」他。TCC会員。

関連書籍

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こやまさんが執筆した書籍

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『choo choo 日和 愛のマタタビ。』

こやまさんが執筆したカレンダー

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