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絵について寺田克也に訊きますよ!


──これから、寺田克也の絵について、一般的な人の目線から質問をして、お話を聞いていく連載をします。線や色やデザインについて訊いていきますが、技術的なことではなくて、寺田さんの絵についての考え方や描くことにまつわる体験談などもお話していただきたいです。でも、何しろ質問者が素人なので、「何でこの色に塗ったんですか?」っていう質問なども多々あるかと思います。

寺田 何だその素人みたいな質問は! オレだってわかんないよそんなこと! みたいな。

──そんな素人質問をしつつ、フリーで30年このお仕事を続けていられることとかも。

寺田 仕事は引き受けるのは簡単だけど、納品するのが大変ですね。

──それは一大事ですね。

寺田 意外と見落とされがちな事実ですけどね。みんなそれで苦労してるはずです。

──ということで、今回は連載のプレオープンなのでテキストだけですが、これからは寺田さんが描いている絵を見せつつ、「何でこの色に塗ったんですか?」みたいなことを訊いていく形式です。

寺田 はい。まあ、絵はそこから受ける印象を受け止めていただければいいので、絵のモチーフや内容についていちいち説明はしないですけど、訊かれれば答えられるし、掘り下げてもいけます。

 質問されたら答えられるっていうのは、ハッタリも含めてなんですけど、普段から自分のモノの見方を割と自覚的に行うように心がけてるからです。そこに出来るだけ意識しておくと、自分が適当に描いてるつもりでも、人に訊かれたときに描いたときの記憶を再生して「これはこうなんですよ」って簡単な説明ができる。

 それは例えば、絵をクライアントに説明して、それを通さなきゃいけないときなんかにすごく役立ちますね。仕事もスムースになるしね。
「これはこういう意味なんですよ」ってちゃんと言えれば相手も納得しやすいとか、「ここの色は何で黄色なの?」とか、相手が単純に好みで訊いてる場合もあるから、黄色じゃなければダメな理由をはっきり言えれば、まあいいかってなることもある。
 そういう自分が持ってるイメージがどこから来ているのか、それをいろいろ普段から考えておくと、やっぱり何かと便利かなー。

──働く人が自分の企画や意見を通したいときにも、そういう考え方を身につけているといいかもしれないですね。

寺田 自分で納得しているかが大事ですかねー。自分も納得してなくて、何となく塗ってると相手に説明できない。そこには黄色じゃなきゃいけない理由を、自分の中を掘って見つけることができるかどうかっていう。

 無自覚になーんとなく色を塗る、空だから青を塗るとか、海だから青緑だとか、観念的に物事に接していると、突っ込んで訊かれたときにオタオタしてしまうけど、自覚的であれば、たとえ思いつきだとしても、自分の中では整合性がとれていたりするのでちゃんと説明ができる。
 逆に人に説明しながら「あ、そういうことだったか!」と自分で腑に落ちることもあります。そういうモノの見方は日常的にしておくといいかも。

──寺田さんは若いときからそういう考え方?

寺田 いや、そんなことはないです。もっともっとバカだった。自覚的でなければならないというのは、折に触れていろいろな人から教えてもらったことですよ。
 専門学校時代、先生に苦し紛れに何か言ったあと、そこを突っ込まれて答えられなかったり、「これは~~です!」って上っ面で言ったあと、別の意見を聞かされて、そこでもう折れちゃうっていうのは、自分がまったく自覚的に生きてなくて、既成概念のままで、いいかげんに物事に接してるってことだから、ってよく言われましたよ。
 そういうことを言ってくれる先生がいたんですよ。「おまえ何も考えてないだろ!バカ!」みたいなこと。それで、今のままだと人を納得させる絵は描けないんだなーと思いました。

──すごく素敵な先生です。

寺田 うん。もちろん学生時代に明快にそう思ったわけじゃなくて、更生したのはずっと後になってですけどね。そのときは若くてバカだから反発してましたです。はっはっは。

 そういうことは要所要所で起こるじゃないですか。仕事始めてからでも、「これは何ですか?」って尋ねられていい加減なこと言ってごまかしたり。でも、普段から自分の持ってる思考や趣味に自覚的であれば、勢いでバーッとやっちゃっても自分の中では正解を選んでいることが多い。

 正解というのは、それが一番沿っているモノを選ぶことだと思うんです。何かを選ぶとき、どうしてオレはこっち側を選んだのか? それを普段から考えるのは訓練になるんですよね。普段の自分の行動原理がどこから来ているのか? 何かを好き、何かを嫌いと決めつける前に、その感覚がどこから来てるのかを考えるのは大変有益だなーと思うわけです。
 緊急時に何かを選んだときに間違えにくくなる。大げさに言うと、色塗りも一緒です。その描こうとしてるモチーフに対して間違えない色を塗るということ。それが「いわゆる一般的」なものの見方から外れていたとしてもいいんです。好みじゃなくて求められていることを掬いとる力が大切で、その絵が求めてる色は何だろうか? と考える。

 自覚的にものごとに接するということは、生き方全般にもすごく大事なことだし、絵を描くこともそこから外れるものではないですよってことですね。

──真面目ないい話になった!

寺田 しまった! マジメな話しちゃった! 次回からは一切マジメなこと言いません! 誓います!

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聞き手 ヒヨコ舎


Profile

寺田克也
1963年12月7日岡山県生まれ。イラストレーター、マンガ家、ゲーム・映画のキャラクターデザイン等、様々な分野で活躍。著書に『西遊奇伝 大猿王』(集英社)、『寺田克也全部』(講談社)、『カバー・ガールズ』(ワニマガジン社)、『寺田克也式ガソリン生活』(朝日新聞出版)ほか。

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寺田克也 ココ10年
KATSUYA TERADA 10 TEN - 10 Years Retrospective -


テラカツ10年分の仕事を総覧できる豪華図録!

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