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第二回目「絵を描くのはなぜめんどくさいか」
その3

『巨人たち


寺田 やっぱりね、めんどくさいのを越えて本当に丹念に描かれてる絵を見ると、頭が下がります。
 この間、生頼範義さんの展覧会を見に宮崎に行ったんですよ。そこには、1000点近くの絵が展示されてるんですけど、それはごく一部でね、生頼さんの作品は本当はもっともっとあるんです。
 とにかく毎日飽きることなく、粛々と、しかし激しい熱を込めて描き進めないと、成し得ない量と質なんですよ。めんどくさいって言ってる場合じゃない人の仕事っていうのは、すごいんです。かたや、オレはめんどくさいことが当たり前のような話をしてるわけです。

 ちゃんと打ち勝ってる人間こそが偉いのであって、生頼さんは本当に巨人だと思いました。質量が尋常じゃない。しかも、イラストレーターっていう職業が認知される前からプロとして活躍してらしてて、一人別格な感じでいたわけですよ。

 その中で、仕事のために絵を描くことについて、何度も考えたと思うんですけど、本当にね、厭わない感じ。労力とか時間とか。絵に対しての熱量はケタ違いでね、それが五十年続いてるってのもすごいし、とにかく仕事に対する姿勢が素晴らしいので、オレなんてホント恥ずかしい。
 生頼さんのすごさは絵具のコントロール。いろんな色の入ってる絵をまとめられるのは、完全に彩度コントロールができてるってことなんです。色をいっぱい入れてまとまらない場合は、だいたい明度と彩度のコントロールを間違えてるんですね。
 生頼さんはそこらへんはほぼ完璧で、一見ざくざくっと塗ってるから、原画は絵具がぐぐっと盛り上がってるんじゃね? と思いきや、イラストボードに平滑なんですよ。
 それはどういうことかというと、パレットでといた絵具をほとんど一回しか置いてないんです。重ねたとしても、2、3回、的確な量で。塗り重ねていって直すんじゃなくて、置いた瞬間にもう決まってる。そのコントロールはハンパないですよ。

 まず、スキルを身につけるっていうのは、迷う時間を減らすことでもあります。「どうやったら描けるんだろう?」「質感出すにはどうしたらいいんだろう?」とか、質感出すのなんて、基本中の基本なので、そこで悩んでたら時間かかるじゃん。
 絵具において、生頼さんは完璧に把握してるってことですよ。ちょっとすごいです。ゾクゾクっとしましたよ。クラクラっとしてヨロヨロっとしましたよ!

 人の絵を見に行くっていうのは、その人の姿勢を見に行くことでもあるんですよオレの場合。ずっと前にノーマン・ロックウェルの展覧会を新宿でやってたんですけど、脳天をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。

 それは確か、『サタデー・イブニング・ポスト』っていう週刊誌の表紙で、床屋の絵だったかな。皆さんどこかで目にしたことがあるであろう、有名な絵ですが、原画が襖二枚分くらいの大きさなんですよ。それの原寸大の鉛筆の下絵があったんです。「こんなにデカいんだなー」とか思って、しかも結構ちゃんと描かれてたんです。
 その下絵の横にキャンパスがあって、下絵に色を塗ったものを見て、「あーこっちが原画か」と思って見てたら、オレが知ってる絵と微妙に違うんですよ。「意外と違うものに見えるんだなー」と一瞬思ったんですけど、更に視線を横に送ると、そっちに本当の原画があったんです。オレが微妙に違うなと感じた絵は、原寸大のエスキース(試し描き)だったんですが、それはオレだったら入稿してるレベルのものなんだよ!(笑)そこにあるのは、それを更につき詰めて描き込んで完成度をあげて。これを週刊誌でやるなんて、たぶん採算度外視なんですよ。その絵が描きたいから描いてる。

 オレはそのとき二十代だったから、余計にね、ハンパな仕事ではこんなところには到底辿り着けないなと思って、絶望にも似た気持ちがわき上がったもんです。
 「めんどくさい」と戦ってる間は、とてもこれはできないと思って。ノーマン・ロックウェルの仕事の全部が全部その工程を踏んでるわけじゃないと思うけど、その絵に関しては、そういうことで、「この絵を描きたい」っていう意志しかそこにはなくて、それが完璧に遂行されてるんです。オレはそのとき、ホントにその姿勢に打たれて、驚いたなんてもんじゃなかったです。

 生頼さんにも似たものがありますね。オレなんか、ただのダメ人間ですよ!筋肉少女帯の歌くちずさみながら東京に帰ってきましたよ! 熱まで出た! 絵を描く人も、描かない人もね、宮崎の生頼範義展に行ってきてください。絶対に感じるものがあるから。何も感じないって人はオレは知らん!
 めんどくさいは敵だ! でも原動力でもある!

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 とゆーところで、今回は終わります。
 これでよかったんですか、前半めんどくさいしか言ってないけど!?
 次回は『絵を描いたらいくらもらえるんですか?』の巻です! たぶん。




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聞き手 ヒヨコ舎 田中里奈


Information 1

空山 基×Rockin'Jelly Bean×寺田克也
「Pussycat! Kill! Kill! kill!」~3バチ展~
会期:2014年3月31日(月)~4月12日(土)
会場:ヴァニラ画廊
東京都中央区銀座8-10-7 東成ビル地下2F

http://www.vanilla-gallery.com/archives/2014/20140331ab.html


Information 2

生頼範義展
会期:開催中〜2014年3月23日(日)まで
会場:みやざきアートセンター
宮崎市橘通西3−3−27 アートセンタービル3F

http://ohrai.net/


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