電子書籍版もあります

はじめに

本書は、「デジタルシフト」という時代変化の本質に着眼し、現在求められているマーケティングの役割を紐解くことを目的に、企画・制作されました。

32の実例を、「コミュニティ形成」や「データ活用」といったタイプ別に分けて紹介。ブランドの知名度や予算規模の大小は問わず、主体的に変化に挑戦した企業や担当者のみを取材しました。

本書では、読者が挑戦者と同じ目線で着想を得たり決断したりできるよう、彼らがたどった思考を追いかけ、フレームワークに落とし込み、各事例を紹介しています。

定価:(本体2,400円+税)
仕様:B5判 / ソフトカバー / 184Pages(Full Color)

事例の一部をご紹介

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大塚食品 ボンカレー「そうめんカレー」プロモーション 大塚食品 ボンカレー「そうめんカレー」プロモーション

萩大島船団丸 萩大島船団丸萩大島船団丸

他にも多様な事例を
掲載しています

キーワードを選択すると、該当する掲載事例の「要約」が表示されます。
“なぜ、その解決策に至ったのか”“解決策では具体的に何をしたのか”が気になる方は、ぜひ書籍をお手に取ってみてください。
書籍内では、各事例を挑戦者目線で追えるよう4ページに渡って紹介しています。

挑戦者からのコメント

編集部より

パイ インターナショナル 代表取締役社⻑ 三芳寛要

出版の動機

本書の企画は、小社が広告・グラフィックデザインの事例集を30年間出版してきた中で、広告が従来の媒体から徐々にデジタルにシフトしていく波を感じていたことから生まれました。

本書の1章でも触れられているように、この10年間でスマートフォンやSNS、ウェブ解析技術など、インターネットに関わる技術は急激な革新を続け、今もなお革新は続いています。消費者がテレビや新聞・雑誌などの既存媒体に触れる時間が減り、インターネット媒体に費やす時間が増えました。これに伴い、ビジネスの分野によっては「これまでの広告が効かない」という声が聞かれ始めました。一方で、これらの変化をチャンスととらえることができたクリエーターやマーケターは、貪欲にデジタルを取り入れ、新しいマーケティング手法を生み出すことに挑戦しています。

彼らの挑戦の原動力は、最新技術に対するリテラシーがあるかどうか、というよりも、「消費者の変化と向き合い」、「どうすれば消費者に届くのかを洞察し」、「商品やブランドに適した手法(アイデア)を生み出す」という、マーケティングに本来求められる基本姿勢にあります。

小社としては、こうした現場の実際を伝えることで、経営・新規事業開発・宣伝・販促・広報といった企業一般の業務に携わる方のみならず、広告クリエーター、Webデザイナーの方々にとっても、新しい手法へのヒントとなる本にしたいと考えました。

従って本書は、変化し続ける最新技術を紹介することに主眼を置いておりません。マーケティングの現場がどのようにデジタルの力を利用し、洞察し、アイデアを生み、課題と立ち向かっているのか、という普遍的なテーマにフォーカスしています。

本書から学べること

本書の制作において、32の企業や自治体、NPO、学校など、大企業からスモールチームまで様々な業態を取材致しました。今回の取材を通じて感じたことは、多くの場合、大企業であっても、「一人の挑戦者がビジネスを変革している」ということです。

課題を解決するために、さまざまな分析によってユーザーインサイトを洞察できたとしても、実行に移さなければそれはまだ仮説にすぎません。新しい施策を実行に移すことには、金銭的・人的な投資が伴います。投資にはリスクがあり、成果が求められます。だからこそ、「最後は勇気が欠かせない」(1章より)のです。取材を受けていただいた各業態のマーケターたちは、みな「勇気を持った挑戦者」でした。

そして本書を読み終えたとき、「勇気を持ちやすくなった」ことが、デジタル化の本質のひとつであると感じていただけると思います。さまざまなデータやツールによって仮説を立てやすくなり、仮説の正しさを検証しやすくなりました。PDCAを高速に回すことで、投資を最小に抑え、成果を得やすくなったのです。本書をお手にとっていただいた方々にとって、「恐れず、勇気を持って挑戦する」ことへの一助となれば幸いです。

廣部 嘉祥 / Hirobe Yoshitada

株式会社ATTIQUE

デジタルエージェンシーにて、PRコンサルタントとしてキャリアをスタート。カンヌライオンズで受賞したデジタル施策などを経験。その後、株式会社ATTIQUEに参画し、ブランドと社会の文脈とをつなげるコンテキストエディターとして企画立案業務に尽力している。マーケティング関連の連載記事執筆や講演実績多数。

廣部 嘉祥

電子書籍版もあります

本書に関連する書籍

本書のサブタイトルにもある、「ブランディング」や「地域活性」、また、本書3章の主題でもある、ブランドの「ストーリー」を伝える、といった、マーケティングにおける課題や手法をテーマとした書籍を小社では刊行しています。

これらの書籍は、企業や地域の課題に対して、マーケターやクリエイターが「知性と勇気で挑戦している」事例を取材した書籍という点で、根本的には『挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング』と同じテーマを扱っていると言えます。デジタル中心か、アナログ中心かの違いはありますが、これらは相互に補完しあう内容です。

例えば、事例「東北食べる通信」は、『挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング』と『デザインで地域を元気にする、プロジェクトと仕掛人たち』いずれの書籍でも紹介しています。「東北食べる通信」は、東北6県のこだわりの食のつくり手を特集した情報誌と、彼らが収穫した食べ物がセットで定期的に届く食べ物付き情報誌ですが、今では全国各地のご当地「食べる通信」が創刊され、まさに「地域」を「ストーリー」で「ブランディング」することに成功した事例です。

『挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング』の中では、情報誌の成り立ち加え、Facebookグループを生産者・消費者のコミュニケーションに活用し、定期購読者の増加など、デジタルを活用して優れた成果を上げていることを総合的に紹介。一方、『デザインで地域を元気にする、プロジェクトと仕掛人たち』の中では、情報誌の編集方針や、実際の誌面構成、さらには全国に広がった、各地の「食べる通信」をビジュアル豊富に紹介しています。

企業や地域の課題を解決する、プロジェクトを成功に導くためは、アナログ・デジタル双方の優れた点を活用することが、欠かせない時代であることを象徴する事例のように思います。ぜひこれら関連書籍もあわせてお手にとっていただければ幸いです。

インタビューデジタルマーケティングについて

DIGIDAY[日本版]編集長が語る、
これからのデジタルマーケティング

長田 真DIGIDAY[日本版]編集長

ニューヨークに本拠地を置き、デジタルマーケティングに関するさまざまな情報を送り届ける国際的メディア『DIGIDAY』。これまで、ニューヨークのほか、ロンドンにも支局を設立していた同メディアを日本独自にローカライズし、2015年9月より運営を開始したのが『DIGIDAY[日本版]』だ。
同メディアの編集長を務め、国内外のさまざまなデジタルマーケティング事例に深い知見を持つ長田真氏に、『DIGIDAY[日本版]』というメディアの持つ意義、また、日本のスモールチームにおけるデジタルマーケティングの可能性を聞いた。

プロフィール

株式会社宣伝会議の月刊誌『編集会議』『ブレーン』の制作に携わった後、2004年に株式会社インフォバーン入社。国内有数のブログメディア「ギズモード・ジャパン」「ライフハッカー[日本版]」などのプロデューサー・編集長を歴任する。その後、ソリューション事業で大手企業のオウンドメディア立ち上げ・運営を担当。2015年9月よりDIGIDAY[日本版]編集長に就任。

プロフィール
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“デジタルマーケティング”の
価値・考え方を根付かせたい

「『DIGIDAY[日本版]』は、開設当初から多くの人に読んでもらえているという印象があります。というのも、すでにお付き合いのあった広告代理店やブランド企業の方などから“読んでいるよ”と言われることが多いのです。これまで、私はいくつかのWebメディアの立ち上げに携わったことがあるのですが、ローンチしてわずか数ヶ月の時点で、これほどの直接的な反応を得たメディアは、ほかにあまりありません。

ちなみに、いままで手がけてきたのはBtoCのサイトなので、BtoBのサイトとなる『DIGIDAY[日本版]』とは、もちろんリアクションも違ってきますが、デジタルマーケティングというジャンルへの関心の高まりは痛感しています。これまで、“マーケティング”に関するメディアはいくつかあったのですが、“デジタルマーケティング”に特化したメディアが他になかったということも注目を集めた大きな理由のひとつかもしれません。

アクセスを解析すると、ブランドのマーケターが海外の最新事例や動向を探すといった読み方をされていることが多いみたいですね。国内外の最新ニュースのみならず、さまざまなエグゼクティブや識者のオピニオンも掲載しているので、いろいろ参考にしていただいているようです。
その一方で、まだ日本には“デジタルマーケティング”という考え方がちゃんと根付いていないとも感じています。なので、業界全体をデジタルシフトへ導いていくことが、我々の最大のミッションだと思っています。」

DIGIDAY[日本版]は、米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳し紹介するメディア。記事カテゴリが"Brands"、"Agencies"、"Punblishers"など、独自の切り口でまとめられている。
http://digiday.jp/

デジタルマーケティングの現場を報じていくうえで、日本企業における縦割り構造の組織体制や、マーケターを出自としたCEOが海外に比べてほとんどいないこと、さらにテレビというレガシーメディアがいまだ強い影響力をもつという実態から、そのような考えに至ったという長田氏。特にデジタル化を遅らせている要因のひとつとして、マーケティングの成果を測るためのグローバルで統一された指標が存在していないことを挙げる。デジタル化によって、さまざまなデータを収集できるようになってはきたものの、それをどのように読み解けばいいのか、また、それを次の機会にどのように繋げればいいのか、多くのマーケターは迷っている。

「たとえば、昨年NHKで放映された大河ドラマ『真田丸』のなかで、小日向文世さん演ずる豊臣秀吉が太閤検地の実施方法を思いついたシーンが印象的でした。それまで各国の石高を測る明確な手段がなかったのですが、米の量を測る升(ます)の大きさがそれぞれの国でマチマチだったことに彼は気づいたのですね。戦国時代でもデータは活用されていましたが、秀吉以前は米の収穫量のデータにいまいち整合性がなかった。
いま日本に限らず、世界中のデジタルマーケティング業界は、この升の定義の仕方について、躍起になっているところです。これまでは、単純にページビューやユニークユーザーなどで効果のほどを測っていたのですが、本当のゴールはそこでいいのかという議論が活発になってきているんですね。」

しかし、日本で“デジタルマーケティング”という考え方が根づいていないとはいえ、書籍『挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング』内でも紹介しているとおり、国内にもデジタルマーケティングを巧みに用いて、ビジネスを飛躍的に発展させている企業があることも確かである。それだけでなく、デジタルマーケティングをきっかけにビジネスを発展させることのできる可能性に満ちたスモールチームも数多くあるのではないのだろうか。そのようなチームは、一体何を足がかりにデジタルマーケティングに取り組むべきなのだろう。

自社のビジネス業態を改めて捉え直すことが
マーケティングのスタートライン

「スモールチームのビジネスに限らずとも、まずは自社のビジネスモデルがどういう形態にあるのか、そこを一度見直すことが必要なのではないでしょうか。ロイヤルカスタマー(編注:企業や商品、ブランドに対して忠誠心の高い顧客のこと)が中心の事業なのか、それとも、とにかく新規顧客を捕まえて薄利多売を重ねなければいけないビジネスなのか。もしくは、その中間なのかによって、デジタルマーケティングにおける打ち手は全然違ってくるでしょう。

たとえ、“ロイヤルカスタマーだけを相手にしていれば、しっかり食べていける”業態でも、もっと事業を拡大していかなければならないのであれば、より多くの人にリーチする必要が出てきますよね。まずは、そういう自社ビジネスの現状と課題を一旦整理して、そのうえでどのような戦略を取っていくのかが、第一歩として重要だと思っています。」

「また、データ分析といっても、自社のデータだけでなく、世の中のデータをうまく用いることも有効でしょう。『DIGIDAY[日本版]』でも表記統一にGoogleにおける検索ワードを参考にしています。利用しているのは『Google Trend』という、世の中の人々がどんな言葉を検索しているか調べることができる無料のWebサービスです。それで試しに、TwitterやFacebookというワードを参照すると、“Twitter”“Facebook”と、アルファベットのまま検索されていることが多い。
 ですが、Instagramだけは、なぜかカタカナで“インスタグラム“と検索されていることが多いんです。なので、“インスタグラム“に関してはカタカナで表記しています。そうすれば、SEOで優位に働く可能性が高まるので。

そして『Google Trend』では、検索される量だけでなく、時期も知ることができます。以前、とあるオウンドメディアの立ち上げ案件に関わった際に、『Google Trend』で”ハム”の検索数を調べたことがありました。そうしたら、なぜか5月だけ毎年検索ボリュームが上がるといった傾向が表れたんですよね。どうやらその時期に”飾り切り“というワードと一緒に調べられている。そこで、新生活が始まって、お弁当のレシピに悩んだ主婦層が”ハム”の”飾り切り”を検索しているのではという仮説を立てたことがありました。残念ながら担当を離れてしまったので、それを実際にコンテンツに結びつけるところまで至りませんでしたが、このような情報を足がかりにマーケティング戦略を練っていくことは、今すぐにはじめられることのひとつなのではないでしょうか。

本当のことを言うと、考えられること全てを実施したうえで、データ分析を行い、最適化していくことがデジタルマーケティングの要のひとつではあるのですが、そうはいかない部分もありますよね。ですので、スモールチームであれば、ファネル(編注:直訳すると漏斗の意。見込み客から受注へと絞り込まれるステップのことを例えた語)の中でどこが一番重要なのか、絶対に外せないところをはっきりと抑えることがまずは重要だと思います。」

スモールチームだからこそ苦しむ
“予算”という問題を乗り越える
たったひとつの方法

ファネルの中でどこが最も重要なのかを抑えることがポイントだと説く長田氏。しかし、重要な課題にスポットライトを当て、打ち手を検討していった際、スモールチームだからこその弱点に陥ってしまうことも少なくはない。

「スモールチームのマーケティングにおける1番の弱点は、なんといってもお金ですよね。ひと昔前であれば自社商品をデジタルで宣伝するにあたって、バナー広告や、Webメディアでのタイアップ広告など、最低でも数十万円単位のお金が必要でした。しかし、今はGoogleのAdWordsだけでなくFacebook広告などでも数千円レベルから始められます。ただ、Facebookやインスタグラム、Twitterもお金をかけずに、企業アカウントを運用することはできますが、現在はアルゴリズムが働き、ユーザーと関連性の低い投稿は上位表示されづらい現状には注視する必要があります。」

「つまり、SNSは広告主にとってお金のかからないアーンド(口コミ)メディアと理解されていた時代もありましたが、いまはお金を投入しなければ訴求しにくいペイドメディアになりつつあるという側面があることも事実です。もし、SNSでお金をかけずに自社商品を訴求したいのであれば、いかに面白いもの、つまり、ユーザーの関心を惹けるコンテンツをつくれるかが重要となりますね。たとえば、Twitterで有名なシャープやタニタのアカウントは、国内のわかりやすい事例といえるでしょう。それぞれ、いままでの企業コミュニケーションにはない、ネットユーザーに好まれるフランクな投稿を実施し、絶大な影響力をもつようになった企業です。いまではファンの手により『シャープさんとタニタくん@』というWebマンガが執筆され、昨年、実際のコミックとして発売されるほどになりました。」

これは、企業の業績的に絶好調のFacebookに対して、いまいち振るわないTwitterも、まだまだマーケティングに有効なツールであることを示している。使い方次第では、大きな成果を得られるというわけだ。ユーザー側に立って、面白い、有益なコンテンツを届けることがメッセージの訴求に大きく影響してくるということである。

「オウンドメディアもそうですよね。ただ面白いだけの記事を出すだけではなく、読者に求められる情報をしっかり作っていくことが重要な時代です。たとえば、私は『北欧、暮らしの道具店』が最強のオウンドメディアのひとつだと思っています。まるでライフスタイルマガジンのような、素敵なサイトを運営しているのですが、コンテンツの基本は商品紹介。ECという彼らのビジネスと直結した内容でありながら、ユーザー目線で商品の使用感を伝えつつ、綺麗にスタイリングした写真を使って、エンターテインメントに昇華しているんです。普通に読んでいるのが楽しいだけでなく、それを読んでいる自分も好きになれるような構造になっている。」

DIGIDAY編集長が今注目するサービスとは

デジタルマーケティングの現状、スモールチームのデジタルマーケティングの活用における重要なポイントを伺ったところで、続いては、国内外のさまざまな事例を日々見続けている長田氏が注目しているツールやサービスについて話を伺った。

「昨年であれば"Snapchat"(編注:TwitterやFacebookと違い、送られてきたメッセージや写真、動画を1度見ると、数秒~数十秒以内に自動的に削除されてしまう、アメリカの若年層に絶大な人気を誇るメッセージングアプリ)に注目していました。Snapchatは送られてきたメッセージが“消えてしまう”。“消えてしまう”から“しっかり見なきゃいけない”という気持ちにさせられる。そこがすごく良く出来ているサービスだなと思っていました。
ところが現在ではSnapchatとほぼ同じ機能をもつ"SNOW"の台頭や、Facebookの"Slingshot"、"Instagram Stories"といった既存のSNSにも類似機能が搭載され、Snapchatへの包囲網ができあがっており、日本では拡大するスキマはなさそうです。あえて今、注目するツールとしてはインスタグラムです。」

「インスタグラムはブランディングの場として、一定規模のオーディエンスを獲得してきています。オーディエンス数で言えばFacebookですが、Facebookはクローズドなツールです。Twitterは、逆にオープンで、そこが良いところでもあるのですが、なんでもツイートできてしまうので荒らされやすく、ブランドセーフティ的にコントロールできないリスクもある。ですがインスタグラムはあくまでキレイな画像で勝負し、ブランディングに適していて、存在感を放っています。
加えて、広告の機能が拡充してきています。広告用のAPIが公開され、Facebookの持つターゲティング技術を用いて、ダイレクトマーケティングも行えます。さらに購入ボタンの表示、ランディングページへの遷移など、購入動線の提供も充実しています。2012年に行われたFacebookによるインスタグラムの買収は、非常に大きなシナジーを生んでいると言えるでしょう。」

書籍の中でも触れているとおり、Webサービスを取り巻く状況は刻一刻と変化している。そのため、常に新たなサービスに目を向けることは、先述した“ユーザーの求めるコンテンツを用意することがメッセージの訴求に大きな影響を与える”という面においても武器のひとつになりうる。

目標を明確に設定することで
データを正確に読み解く重要性

それでは、書籍の中でも大きく紙幅を割き、これからのデジタルマーケティングになくてはならない発想方法のひとつとして紹介している、“ユーザーインサイト”について、『DIGIDAY[日本版]』では、どのように捉えているのか、また、本書の読者であるスモールチームのメンバーに必ず活きてくる、今後のデジタルマーケティングにおいて、最も重要な発想について伺った。

「世界で最も価値のある企業となったAppleの創業者スティーブ・ジョブズが、製品づくりについて“人は形にして見せてもらうまで本当に自分の欲しいものがわからない”と語ったという有名なエピソードを考えると、データ分析だけにこだわりすぎても良くないとは思います。さまざまなデータを読み解いたところで、ユーザーの本心を100%理解できるとは限らないですから。」

「つまりデジタルマーケティングでも、私が担っているメディア運営でも、担当者である自分がスーパユーザーであろうとすることは大切だと思います。『DIGIDAY[日本版]』でも、誰でも知っているようなビッグブランドの事例や、Google・Facebook・Appleの動向を追った記事はもちろん人気です。その一方、誰もがうっすら感じているものの、誰もがまだ口にしていないことを掘り下げた記事は、大きな反響を得られます。ユーザーのことをしっかり観察して、データを分析し、洞察することも大事ですが、いちユーザーとしての自分を第三者視点で振り返って、そんな自分が実感として求めているものを掘り出すことも重要だと思っています。もちろん、私を含め、ほとんどの方がジョブズになれるわけではないので、データを使ったユーザーインサイトもとても重要なのですが。」

「また、これら重要性を増すデジタルマーケティングの考え方についてですが、一部の関係者のあいだでは、そう遠くない将来、“デジタルマーケティング”という言葉は消失すると、予想されています。なぜなら、デジタルで施策を打つことがいま以上に当たり前になり、シンプルに“マーケティング“という単語に集約されるからです。
高度にデジタル化することで得られる最大の恩恵のひとつは「数値化」でしょう。ユーザー行動や心理だけでなく、製造から販売まで、事業活動のすべてを数値ではかれるようになり、それぞれの因果関係を紐付けることができるようになるはず。
そのときに、重要性が増すのは目標設定です。さまざまな局面から送り届けられる数値を読み解いて、どのような状態を目指すべきか、しっかり見定めることが大切になると思います。」

数字をもとにした最近の事例として、長田氏は「小学館「コトバDMP」が示す、キーワードデータの可能性:データドリブンなコンテンツ開発」を挙げた。 http://digiday.jp/publishers/syogakukan-kotoba-dmp/

 目先の数字だけに囚われず、その数字を立体的に見ることが重要だと続ける長田氏。トライアンドエラーを繰り返して、成功を引き寄せるというマーケティングの王道的な考え方こそが、デジタル時代のマーケティングのあるべき姿だと締めくくってくれた。

(写真:栗原洋平 文:パイ インターナショナル編集部)