夜長堂が日本の西から東・過去から現在を旅してみつけた、古びない・すてきなもの。
取材中のこぼれ話や夜長堂の活動をご紹介します。
姿の見えないお店
みなさんは、夜長堂を知っていますか?
夜長堂っていうからには、なにかのお店の名前なんでしょう。どこかに不思議なお店が出ているのでしょう。
見つかるのは「姿はみえねどいつなんどきも営業しております」の言葉だけ。
このたび5月に発売する『夜長堂の乙女モダン蒐集帖』刊行を記念して、すこしだけ、夜長堂の謎めいた姿を覗いていこうと思います。
まず、夜長堂の店舗は、あります。でもいつも開いているわけではないようです。あまり見たことがないような、不思議なものがいろいろ。たぶん、ぜんぶ売り物なのではないのでしょう。誰かのお気に入りのものもいろいろ置いてあって、持ち主は小学生の女の子のようでもあるし、昔の男の子みたいにも……もっともっとお年を召した方のようにも見えます。
夜長堂のペーパー、そしてハンカチには、それぞれ名前がついています。「あこがれタワー」「ロマンバード」「People」「探偵うさぎ」「南の国から」「かぎ」「レース」「お相撲さん」「春の音」などなど。
夜長堂の商品は、もちろんかわいいのですが、ひとくせありそうな気配が漂ってきます。現代っぽくはないけど、単なるレトロでもない。一言で表せないんです。でも、ストライクではまってしまう人が、周りに1人くらいは、いるはずです。
一言で説明しにくい夜長堂が、「こんな素敵なものがある」と、コツコツこっそり、日本中で集め続けてきた好きなもの。それが、今回の『夜長堂の乙女モダン蒐集帖』です。
本の内容も、たいへん説明しにくいのですが、夜長堂のテイストをお気に召した方なら、店主の投げるさまざまな変化球を、驚き、ときに笑いながら受け止めてくださることでしょう。
表紙の絵は、夜長堂の盟友である、関美穂子さんに担当していただきました。
関さんの不思議で可憐な世界で包んだ夜長堂からのギフト。どうぞ手にとってくださいましたら、制作者一同、大変幸甚にぞんじます。
★夜長堂
関西を拠点とするアーティスト、井上タツ子の屋号。「モダンJAPAN復刻ペーパー」と題したかわいくて懐かしい雰囲気のペーパーや、レターセットなどの自身で商品展開を行うほか、さまざまなアーティストや企業とのコラボレーション商品の開発・イベントの企画など、幅広く活動している。
また、ビルの魅力を謳う活動体BMC(ビルマニアカフェ)にも所属し、いいビルを使ったイベントの開催やリトルプレス「月刊ビル」の発行にも精力的に携わっている。なお、夜長堂の由来は、坂口安吾の短編小説「夜長姫と耳男」から。
著書『乙女モダン図案帖――大正昭和の紙もの・布のかわいいデザイン』(2010年)、共著に『いいビルの写真集』(2012年)『いい階段の写真集』(2014年、以上すべて発行元パイ インターナショナル)がある。
http://www.yonagadou.com
絶賛発売中!
『夜長堂の乙女モダン蒐集帖』
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日本で作られて海を越えたすてきなタイル・おばけごま・夜祭り・キャバレーのインテリア・踊り子たちの衣装帖・昭和から届いたスーベニール・骨牙に彫られた繊細な薔薇……かわいくてヘンなものを見つける天才、夜長堂が心魅かれるニッポンの魅力。骨董市をそぞろ歩くように、宝探ししていただければ幸いです。