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広告コピーの中には、ストーリー性が強く、
詩や短編小説のような世界観で綴られたものがあります。

コピーライターは、その物語をどうやって書いたのか。
ふだん何を考え、何を思っているのか。
その「舞台裏」をご紹介します。

もしかすると、小説よりおもしろいと思える広告コピーが
この中で見つかるかもしれません。

第九回の物語

BEAMS
WOMEN’S


ともだちの幸せがうれしいひと。
朝はやく起きるのも、寝坊するのも好きなひと。
好きなひとが好きな歌が好きなひと。
よく笑うひと。よく泣くひと。よく食べるひと。
空が好きなひと。海が好きなひと。
自分が嫌いだけど好きなひと。
世界にひとりしかいないひと。
She is a Rainbow.


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【BEAMSのポスター】
コピーライター, クリエイティブ・ディレクター:高崎卓馬
アート・ディレクター:石井 原
デザイナー:藤大路季子


第九回の舞台裏


本も映画も広告も


前回の「恋をしましょう」、そして今回の「BEAMS WOMEN’S」の他、JR東日本の東北新幹線キャンペーン広告や映画『ホノカアボーイ』の脚本・プロデュース、小説「はるかかけら」の執筆など、「言葉」をベースにさまざまなジャンルで活躍する髙崎卓馬さん。

「小説、映画、小説。媒体は違いますが、伝えたいことは変わりません。「こういう気持ちになってもらいたい」という終着点がどれもいっしょで。ポスターに数秒触れた時、CMを15秒見た時、映画を90分観た時、小説を280P読んだ時、どれも心の中に持って帰ってもらうものが同じであってほしいんです」

自分が伝えたいこと。それを「後味」、「読後感」、そして「人格」と髙崎さんは呼ぶ。つくる人が変わらないなら、媒体が変わってもその「人格」がにじみ出てくるのだ、と。

「小説や広告ではもちろん表現方法は違います。小説ならストーリの中で紆余曲折しながら、広告なら短い間に内容を凝縮させたり。ただ、自分が伝えたいことを最適に伝えてくれる形であれば、誤解を恐れずに言うと表現方法や文体はどうでもいいんです。でも、突き詰めてやれば必ず僕が43年間見てきたものがにじみ出ます。やらなきゃいけないことだけじゃなくて、その先にある、もう少し深いところまで人間味を出して徹底的につくらないと、満足のいくものにはならないと思うから」



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BEAMS WOMEN’Sキャンペーンサイト
声と音楽によるショートストーリーなどが楽しめる




人間って面倒くさい

「考える」「想像する」ことを止めない高崎さん。その思考のベースには、学生時代の経験があるという。

「学生時代に自主映画をつくっていたのですが、自主映画ってつくった人同士でしか見ないんです。だから面白くない(笑)。80万ぐらいバイト代をつぎ込んで何日も徹夜しても、ぜんぜん賞なんて取れないし。で、芝居なら人を集めて見せることができる!ってことで、劇団をつくったんです」

当時の自分を振り返り「自分のことをどう表現するかで頭がいっぱいだった」という高崎さん。そこでショッキングなできごとに目の当たりにする。

「その頃、思ったことを形にしても伝わらない、という経験がいっぱいあったんです。感動すると思ってたシーンでお客さんは笑ってたり、逆に意外なところでジーンときてたり。公演1回目と2回目で、お客さんの雰囲気が違うだけで笑う場所も違ってたり。正直、「人間てめんどくさい、ややこしい」と思いました(笑)。自分のつくっているものが「相手にどう見えるのか」、「どう思われるのか」を考えるのはどエラく大変だ、と。それを学生時代に身をもって覚えているのが、今振り返るとよかったなと思います」

そして大学卒業後、電通に入社した高崎さんは、「自分をどう表現するか」だけでなく、「相手にどう思われるのか」を常に念頭に置き、仕事に没頭する。その結果が、今の輝かしい活躍につながっているのは言うまでもない。



究極の「思考アスリート」

世の中の気持ち、反応を想像しながら広告をつくりつづけて20年。今では映画や小説など、活躍のフィールドを広げている高崎さんが、そこで伝えたいこととは何なのだろう。


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髙崎さん著『はるかかけら』



「人は絶対に死にます、しかも1人で。ただ、別れもあるけれど、そう悪いものじゃない。悲観することもない。死んじゃうと悲しいけど、その人と過ごした時間はなくならない。悲しいんだけど、悲しいだけじゃないはずで。…そんな読後感を、表現物を見た人、そしていっしょに仕事をした人に感じてもらいたい。仕事をした人間と、本や広告を見てくれた人間が、同じ印象を抱いてほしいんです。表現物も自分もいっしょだから」

高崎さんの小説「はるかかけら」には、こんな一節がある。

忘れないでください
昨日が今日になっても
昨日がなくなるわけではないということを
世界が僕の明日を奪っても
君といた昨日までを奪うわけではないということを
未来がなくなっても
僕たちが出会えたことがなくなるわけではないということを
(「はるかかけら」より)

BEAMSの広告も、映画「ホノカアボーイ」も、見終わった後、どこか同じように、心がほぐれ、優しく、前向きな気持ちになれる。そして、見ている人がそんな「読後感」にたどり着くようにと、高崎さんはどこまでも考え抜く。「新しく何か物語をつくっているのか」と聞くと、「つくっています」と即答した高崎さん。そして最後に一言、こう付け加えた。「徹底的に取材して、考えまくってますよ」と。




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髙崎卓馬(たかさき たくま)
電通 コミュニケーション・デザイン・センター クリエイティブ・ディレクター / CMプランナー / コピーライター。1969年福岡県生まれ。主な仕事にオランジーナ、オールフリー、アセロラ、インテル、JRA、ナツイチ、東芝REGZA、JR東日本ほか、映画「ホノカアボーイ」の脚本・プロデュースも手がける。2010年クリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞。著書に「表現の技術」(電通)、「はるかかけら」(中央公論新社)など。


新刊案内

Web未公開の広告コピーや
制作秘話も!
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『物語のある広告コピー』

1,500円+税(216ページ)

本書では、ストーリー性が強く、詩や短編小説のような世界観で綴られた広告コピーを紹介します。コピーライターの「教科書」としてはもちろん、ストーリーを味わう「エッセイ・物語集」としても楽しめる1冊です。

【掲載作品】
女子ではなくて、女の子。(earth music&ecology)
泣いたオムレツ(ユナイテッドアローズ)
海も山もある故郷を、なにもない町と呼んでいた。(五明)
人生が、ラブストーリーでありますように。(明治)
南アフリカの父へ(朝日新聞)
日本一おいしいうどん屋(名古屋広告業協会)
など、約100作品

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心に染みる広告コピー、
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『何度も読みたい広告コピー』

高崎卓馬さんが
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『はるかかけら』

高崎卓馬さんが
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『表現の技術―グッとくる映像にはルールがある』