赤鬼は強い
さてさて今宵の餓鬼三十六鬼
いきなりの両方譲らずの
激突から始まりじゃ
「いい匂いがするぞ、赤鬼」
まずは力比べと両者手を握る
巨大な餓鬼が鼻をヒクつかせる。
「久しぶりだな、赤鬼。
うまそうな匂いがすると思ったが、
すでにお前の餌だったか」
「ナオミに触れな!
ミーの怒りの餌食となるぞ、
鑊身鬼(かくしんき)」!
「お前の体は少し硬すぎた。その娘ならきっとうまかろう」
青鬼はナオミの耳元でささやいた。
「これは昔々の話じゃ。赤鬼が鬼になる前に、
その体を食った餓鬼の一人があの鑊身鬼(かくしんき)なんじゃが、
その時以来、鑊身鬼(かくしんき)は赤鬼をなぜか友と呼び、
何かとつきまとってくるんじゃ
もしかしたら赤鬼の肉体の再生を待ってるのかもな。ヒヒヒヒヒ」
両者譲らずの押し合いへし合い。
赤鬼は隙を見て鑊身鬼に乗りかかる
「お前の空腹は一時しのげたはず、真意を言え」
「さすがは、赤鬼。餓鬼道を克服した者よ。
娘を食べるのは俺ではない線龍様じゃ」
「なるほど、奴が娘を欲するのであれば今宵のお前は我が宿敵!」
赤鬼はそういって鑊身鬼に拳を振り上げた。
だが、鑊身鬼も当然の如くそれを見越していたのか、迷うことなく応戦をする。
襲いくる鑊身鬼に赤鬼は上から飛び乗り、ついに巨大な餓鬼を押し倒した。
「分かった、赤鬼。お前の強さは理解した。
俺はこの場から身を引こう。だが覚えておけ!
飢えた餓鬼はこの先にあふれているぞ」
ところがそうは問屋が卸さない
「いや逃がさん!」赤鬼は力強く言い放った。
そして四股を踏み、気合いの構えを整えた。
青鬼はそれをみて慌てて赤鬼の前に飛び出し、
はっきょい……と、手を上げたた。
そして少し間を置いての
ノコッタ!!
という叫びと共に、赤鬼は一気に鑊身鬼にとどめの一撃を加えた。
吹き飛ばされながらも小さくなって行く鑊身鬼
勝負に負け罪悪感に打ち拉がれた鑊身鬼はその恥ずかしさのあまり、
見る見ると小さくなっていく。
「それにしても、あの時のお前の腕はうまかった」と訳の分からない断末魔を叫び、
最後はナオミの手のひらに小豆ほどのサイズになってうずくまった。
「心配するな、死んだわけではない。
また時が経てば飢えで立ち上がる。
それが餓鬼じゃ」
青鬼はそう言うと、ナオミは妙な事を訊ねた。
「この子はここに置いていくの?」
「何を言っている、娘よ」天照はそれを遮るように言葉を挟んだ
「餓鬼の悲しみを見届けるためにお前は連れてきたのじゃ。
まあ、そやつを連れて行くかどうかは勝手にするがいい」
さてさて、
最後はなんと赤鬼の必殺技が
炸裂したのじゃが、
前もって言ってほしいものじゃ、
こちらも準備があるんでの〜。
次回はナオミが罪悪感で打ち拉がれた
鑊身鬼をどうするのか、それが見物じゃ
ワシなら食ってしまうんじゃがな
ひゃっ
ひゃっ
ひゃっ!
今宵の餓鬼はどんな餓鬼?
こんなわしらに何か妖怪?
≫第5話
著 竹安佐和記
http://www.crim.co.jp/crim/Top.html
イラストレーター・ゲームキャラクターデザイナー
主な仕事
『デビルメイクライ』 モンスターデザイン
『鉄騎』 モデル製作担当、パブイラスト
『大神』 妖怪デザイン
『El Shaddai』 ディレクション、キャラクターデザイン 等
©Sawaki Takeyasu. All Rights Reserved.
ゲーム&アニメ キャラクターデザインブック
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2009~2011年に発表されたゲーム・アニメを中心にキャラクターデザイン画を紹介。ゲームとアニメの垣根を取り除き、今、どんな絵柄が必要とされているのかが本書でわかる一冊です。 副島成記、金田榮路らのインタビューも収録。