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    コミックアート

    「読者の方が旅人となり、断片的な記録を元に、この見知らぬ宇宙を自由に旅してくれたら」坂月さかなさんスピーチ@ボローニャ・ラガッツィ賞受賞者イベント

    2021年4月に出版した『坂月さかな作品集プラネタリウム・ゴースト・トラベル』が、「ボローニャ・ラガッツィ賞コミックス・ヤングアダルト部門 2023年」最優秀賞を受賞しました。3/7(火)に現地イタリア・ボローニャのブックフェア会場で行われた受賞者イベントで、著者・坂月さかなさんが行ったスピーチの内容を、読者の皆様にもお届けします。

    ▼受賞に関するプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000901.000012505.html

    【坂月さかなさんスピーチ】
    みなさんこんばんは。坂月さかなと申します。
    『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』がこの賞を受賞することができて、大変光栄に思います。ボローニャラガッツィ賞の運営の皆様、出版関係者の皆様、家族、そしていつも応援してくれる読者の皆様に感謝を述べたいと思います。どうもありがとうございます。
    『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』は、「ここではないある宇宙の旅の記録」をテーマにした作品集です。4部構成になっています。

    1部は、旅の写真を思わせるような風景画集。

    2部は、ある宇宙で眠らずに暮らす少年が短い旅をする、絵本風の物語。

    3部は、様々な星を自由気ままに旅する少年の、短編漫画。

    4部は、3部の主人公の少年の過去を紐解く絵本風の物語。

    それぞれのエピソードは、一見独立したショートストーリーのように見えるかもしれませんが、全てが関係しあっています。例えるなら、いろんな土地で見つかる小さな石たちが、元々は全て同じところからやってきた隕石だったことが後から分かるようなものです。読者の方が旅人となり、断片的な記録を元に、この見知らぬ宇宙を自由に旅してくれたら、と思いこのような構成にしました。


    この本で一番こだわったのは、夜の表現です。
    私は、孤独な夜がとても好きです。なぜなら、光が一番美しく見える時間だからです。たくさんの夜の光を描きとめたい、それを誰かと分かち合いたい、と思ったのが、この本を作るきっかけでした。
    この本では、全てのエピソードが「青く静かな夜」を舞台に展開されています。特に多様な青色の表現ができるよう努力しました。夜空が暗ければ暗いほど星はたくさん見えます。街ではたくさんの家や乗り物の光が見えます。星に手は届かないし、人々の顔も暗くてよく見えないけれど、遠くに誰かがいて、生活をしているのだという優しい気配だけが感じられます。夜の寂しい青を美しいと思ったことがある人ならば、どこの世界の人でも、きっとこの本を楽しんでもらえるのではないかと思います。
    この本がみなさんの枕元で光る小さな星になり、読んだ人の心を少しでも照らしてくれたらと願っています。ありがとうございました。

    【質疑応答】
    あなたの漫画の最初のコンセプトは何でしたか。そしてどのようなモデルがあなたにインスピレーションを与えましたか?

    「心地よい寂しさ」を強く意識していました。生きている以上、人には別れがあり、孤独はついてきます。それを少しでも心地よく、暖かく肯定したいという気持ちがあります。海外の児童文学で言えば『星の王子さま』の影響が少しあり、日本のSF作品『ヨコハマ買い出し紀行』や『少女終末旅行』などの漫画からもインスピレーションを受けています。

    審査員たちは、あなたのSFストーリーの雰囲気をとても気に入っています。 雰囲気は、動的な要素よりもずっと重要だと思います。著者としてはこの点について、どのように捉えていますか?


    ありがとうございます。私も、雰囲気が最も重要と考えています。言動やストーリーは手短な言葉にまとめて人に伝えることができますが、そのぶん、簡単に消費され、忘れられてしまいがちです。しかし雰囲気は、簡単な言葉で表すことができないため、人の心の奥に長く残りますし、作品の世界を本当に旅してきたかのような錯覚を呼び起こします。読書は別世界への旅だと思っているので、私は雰囲気作りに最も力を注いでいます。

    ー宇宙の旅を題材とするあなたの作品と、私たちが生きている時代との間には、どのようなつながりがあるのでしょうか?あなたの絵が物語る孤独や憂鬱の感覚は、現代をとてもよく表現していると個人的には思います。

    実を言うと、現実世界のことは全く考えていませんでした。「ここではないどこかに行きたい」、と考えて作品を作っていたので。ですが、やはり私も現代人としての孤独を抱えながら生活しているので、それを作品の中で肯定したいという無意識の欲求はあったと思います。私はこの作品の中で、他者と手を繋ぎ、コミュニティを作ることで、孤独に抗うのではなく、お互いが遠い星に住む孤独な住人であることを認め合いながら、手を振り合って楽しくやっていこう、というムードを作ろうとしました。そういった孤独の癒やし方というのは、現代の感覚に合っているのかもしれません。

     

    【書籍情報】
    『坂月さかな作品集 プラネタリウム・ゴースト・トラベル』

    コミック&イラストで綴る〈ある宇宙〉の物語
    『坂月さかな作品集 プラネタリウム・ゴースト・トラベル』は、漫画・イラスト・ストーリーで綴る4章からなる〈ある宇宙〉の旅の記憶の物語です。著者の商業初作品集であり、宝島社『このマンガがすごい!2023』オンナ編第5位にランクインした漫画『星旅少年』とリンクする前日譚的な作品としても注目を集めています。
    第25回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門 審査委員会推薦作品。

    ▼書誌ページ
    https://pie.co.jp/book/i/5487/

    【著者】
    坂月さかな
    イラストレーター・漫画家。「ある宇宙の旅の記憶」をテーマに、孤独で静謐な世界を優しい筆致で描く。『令和元年のゲーム・キッズ』(星海社)装画、『水の聖歌隊』(書肆侃侃房)装画、『少女終末旅行 公式アンソロジーコミック 2』(KADOKAWA)寄稿。2021年4月商業初作品集『坂月さかな作品集 プラネタリウム・ゴースト・トラベル』、2022年4月商業漫画デビュー作『星旅少年』を刊行(どちらも小社刊)。 
    Twitter:https://twitter.com/sakatsuki_fish
    Instagram:https://www.instagram.com/sakanasakatsuki/

     

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