これからの持続可能な社会をつくるために、私たち一人ひとり、企業としてできること。『すてるデザイン』制作チームインタビュー
サーキュラーエコノミーをデザインの視点で考える書籍「すてるデザイン」。プロジェクト発足の経緯からサーキュラーエコノミーに対するデザインの役割まで、本書に掲載しきれなかった内容を制作チームの横井絵里子さんに伺いました。
ー「すてるデザインプロジェクト」発足の経緯を教えて下さい。
共創プロジェクト「すてるデザイン」は、企業の産業廃棄物に新しい価値や意味を与える、美大によるサーキュラーエコノミーに向けた新しい取り組みとして、2021年5月から始動しました。多摩美術大学 TUBのディレクター 永井一史教授と、プロジェクトリーダーのプロダクトデザイン専攻の濱田芳治教授、株式会社ナカダイの中台澄之社長がコアメンバーとして取り組んでいます。
プロジェクト発足の背景には、多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム(TCL)での出会いがありました。本学では2020年から、ビジネスパーソンに向けたTCLを開講しています。このプログラムは、デザイン経営を社会に実装することを目的とした社会人対象の講座です。3ヶ月の期間中、大手企業の新規事業担当者やベンチャー企業の経営者など、毎回異なるデザイン経営を実践するゲスト講師をお招きしています。その中で、中台社長にご登壇をいただく機会があり、講義の中で「すてる」のリアルな現状を伺いました。これまでの美術大学の教育では「つくる」ことに重きが置かれていましたが、現場から何か変えていかなければならない、という永井教授、濱田教授と中台社長の想いが結集したことが、構想のきっかけです。
このプロジェクトは、さまざまな企業や団体と本学の学科が横断的に取り組んでいます。「すてる」ということへ根本的に向き合い変えていくには、多様な立場の人々が対話しながら共創することが不可欠だからです。こうした思いに共感くださった方々とパートナーを組み、プロジェクトが始動しました。
ーサーキュラーエコノミーとは何ですか。
サーキュラーエコノミーとは「循環型経済」。つまり、廃棄物や汚染の発生を抑える製品・サービス設計を行い、原材料や製品をできる限り高い価値のまま循環させ続ける経済の仕組みのことです。製品やサービスのそもそもの設計段階で回収や再利用を前提として、ごみの発生を想定していない概念で、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした直線型経済に変わる経済モデルとして注目されています。
本書でもサーキュラーエコノミーが何であるのかをご紹介していますが、その最も大きな背景には、私たちは地球という大きな生態系の一部として生活を営んでいる視点が欠かせません。本来、地球には大きな自然のサイクルがあり、人間もその中で生きてきました。しかし産業革命以降の人間の経済活動や日々の暮らしが与える自然環境への影響が大きく、自然のサイクルが許容する範囲を超え、回復が追いつかない、もしくはマイナスの効果により、気候変動や生物多様性の損失など、様々な問題が深刻となっています。
サーキュラーエコノミーを推進するエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの三原則の中で、サーキュラーエコノミーはデザインによってもたらされる、と定義しています。デザインに関係している方々は、何らかのモノやサービスを生み出すことに近い存在かと思いますが、それは決して環境を破壊するために行なっていることではないと思います。しかし、結果的にその行いが環境に何らかの影響を及ぼしているのだとしたら、デザインでそれを変えることができるのだと指し示されているのです。
サーキュラーエコノミーへの移行には、個人や一企業など、単独での解決が難しい課題が数多くあります。その課題に向き合うには、分断しているそれぞれの分野の横断的な繋がりが求められます。本書では、そうした循環を実現するための仕組みからデザインしている取り組みを数多くご紹介しています。
ーサーキュラーエコノミーをいち早く取り入れた国はどこですか?具体的な取り組みもあわせて教えて下さい。
欧州連合(EU)は、2015年にサーキュラーエコノミーを政策パッケージの中に取り込み、循環型経済への移行を実行していくことを宣言しました。同年の国連ではSDGsが採択され、COP21ではパリ協定が採択され、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みが示されています。近年は目にすることの多いSDGsロゴとアイコンは、この年の国連で発表され、翌年1月から使用が開始されています。それまでの分厚い環境報告書などは専門的な用語や情報が多く、なかなか一般の人には届きにくいものでした。しかし、SDGsの17の開発目標と、これを達成するための169のターゲットが、短い言葉とわかりやすいビジュアルで示されたことで、多くの人へと伝わるものになったそうです。このようなコミュニケーションがもたらしたものは、デザインが大きく寄与した点かと思います。
サーキュラーエコノミーを政策やルール作りの中に取り入れたのは欧州がいち早い動きでしたが、それはEU各国の背景や文化が異なることから、政策としてルール化する、という手法が取られたという理由があるそうです。日本や中国などでも、サーキュラーエコノミー政策に関わる動きは2000年前後から出てきており、一概に特定の場所を先進だと評価することは難しいとされています。
少し話は変わりますが、例えば、日本は国土の大半が温暖湿潤な気候帯で、四季がはっきりと移り変わるような特徴があります。また、大昔から地震や風水の災害による影響も受けてきているため、特にキリスト教的世界観から生まれた自然と、日本の自然の捉え方は異なるものとして比較されることが多いです。日本的に自然として捉える環境は、私たち人間と対峙するものではなく、人間も自然の一部というもので、このような考え方は欧米ではなかなか理解されにくいものだったそうです。日本的な自然の捉え方にもともとサーキュラーの概念が存在しているのであれば、見えてくるヒントも多くなるのではないでしょうか。現在の経済システムからサーキュラーエコノミーへの移行には、国際的な枠組みや目標など、大きな視点での捉え方もありますが、よりローカルな視点も必要とされており、日本ならではのサーキュラーエコノミーを探る取り組みも出てきています。
ーなぜ「すてる」ことに意識を向けなければいけないのでしょうか。
本書の中でも「すてる」について歴史的な視点で触れていますが、第二次世界大戦後、生産と消費の量が豊かさとされ、急速に経済発展が進みました。しかし、先進工業国では排ガス、排水、廃棄物などが格段に増大し、公害が大きな社会問題となっていました。そして今から約50年前。国際的な環境問題への関心が高まりから、1972年に環境問題全般について初の大規模な国際会議となる、国際人間環境会議がストックホルムで開催されました。この頃には、地球の資源を取り出したりごみとして捨てたりすることが有限である考え方が広まりつつあったそうですが、いまだに経済的な豊かさと暮らしの便利さ、快適さといった価値観を切り離す転換期の真っ只中です。
「すてる」ことは、今、手元にあるものを手放すことです。それは、必ずしもごみとして捨てることではないと思います。「モノの一生は、埋め立てられるまで続く」と中台さんに伺ったことがあります。最終処分されるごみは埋め立てられますが、処分場も容量が限られており、最終処分場が満杯になるまでの残余年数は減少傾向が続いています。埋め立てられるまでの時間をいかに長くするか、と考えると、いらなくなった服を売ったり、リサイクルボックスに入れたり、シェアリングサービスを利用したりと、色々な方法が思い浮かぶかと思います。そこには、不要になったものを手放すときに、次のステップへ繋げる仕組みが存在しています。こうした仕組みは優れたものもすでにたくさんありますが、循環の流れを構成する<資源調達~作る~売る~使う~手放す~再資源化~>の各段階が分断されていて、まだまだ仕組み化できていない部分の方が多くあります。
また「すてる」と聞くと、どうしても最後の出口である使われた後の「すてる」に着目されがちですが、それ以前の製造過程や出荷前の工場在庫など段階からも、たくさんの「すてる」が発生しています。こうした普段の生活では見えていない「すてる」部分や、自社の事業視点からだけは見えない「すてる」へ意識を向けるようなアプローチが必要とされています。
「すてる」ことに意識を向けて、今あるものをごみとして捨てないことを考えると、できることや変えたいことはたくさん出てくるのではないでしょうか。私たち一人ひとりがそれらに一つずつ向き合っていくことで、日々の暮らしが少しずつ変わっていくのではと思います。
ー「すてる」ことを考えると、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。
今、多くの人が環境問題を身近に感じたり、考えざるを得ない状況にある中で、向き合うべき問題が大きすぎるため、自分だけではどうすることもできないジレンマや不安を抱いている人も多いのではないかと思います。「すてる」ことを考えすぎてしまうと罪悪感を感じて、「すてられない」ような感覚を持っている人も多いのではないでしょうか。「すてる」ことを考えることは、社会の仕組みを変えていくことでもあります。循環型の社会にするために、今の仕組みでは不便なところを便利な形に変えていくことで、「すてる」に対するネガティブな意識を、気持ちよく「すてられる」暮らしに変えていけるのではないでしょうか。
また「すてる」を考えることは、人権、経済・社会、地球環境、さまざまな分野にまたがった課題に紐づいており、ごみ問題だけを考えることではありません。サーキュラーエコノミーの中では、すべての人がプラネタリーバウンダリー(地球の環境容量)の中で、社会的公正を担保しながら、繁栄していくことが目指されています。これまでの経済成長を目指す形ではなく、経済成長と環境負荷や人々のウェルビーイングなどを切り離していくことで、何が本当の豊かさなのか、幸せなのかなど、私たちの暮らしの価値観が変わっていくことでもあるのかと思います。
ーサーキュラーな社会を作るためにはどうすれば良いでしょうか。
私たちは美術大学という場所から、循環型社会の実現に向けて何ができるかを模索してきました。その最初の一歩は、現在の課題が何であるのかを「知る」ことでした。私たちのプロジェクトメンバーは、デザインやクリエイティブを中心に置いているタイプが多く、環境分野の科学者や研究者のような専門的な知識や知見は持っていません。また、大学という教育機関ですので、ビジネスとしての実践からも少し距離があります。そこで初めは、こうした分野の研究者や実務家の方の力をお借りして、勉強会を通じて課題の背景を知ることからスタートしました。また不定期ですが年に数回、「すてるデザイン」をテーマとした展覧会を、学生の作品制作や研究活動と並行して行ってきました。こうしたアクションは、一般の人でも無料で参加できる形で公開・アーカイブ化しています。このように開かれた機会創出へ積極的に取り組んできたのは、様々な分野や立場の方々に参加してもらうことで、現状を一緒に知り、その中の課題意識へ「共感・納得」を得てもらい、参加者自身が自分ごととして「考える」ことや、具体的な「行動する」につながれば良いなという思いがありました。
今の社会では、それぞれの分野で法律やルールが決められており、横断的に課題を捉えることが難しい側面があります。一個人や一企業だけではどうすることもできない課題に対して、教育機関をプラットフォームにすることで、異業種・異分野の方が繋がりやすい機会も増えます。地道な活動を積み重ねて、私たちもまだまだ模索している最中ですが、この取り組みの共創パートナーの皆さんが、オープンマインドに接してくださる姿勢に、いつも励まされています。サーキュラーな社会を作ることは、誰も正解が見つけられていませんが、こうした未知の課題に飛び込み、柔軟に変容していくことも、一つのヒントかもしれません。
ー私たち一人ひとりができることと、企業としてできることは何でしょうか。
私たち一人ひとりでも、できることはたくさんあります。今は、環境問題に目を向けている人は個人レベルでもたくさんいらっしゃいますし、実際にできるアクションを起こして呼びかけているものに参加してみる、という方法もあるかと思います。個人的には、最初は何となく生活に取り入れてみるような形でも良いかと思っています。でももし、何となく、よりも一歩踏み込みたい、という興味が湧いた方は、なぜその行動をする必要があるのか、その先を知ってみると、よりたのしく参加する方法が見つかると思います。
企業の方々は、すでに様々な取り組みを実行されているかと思います。先ほど述べた「サーキュラーエコノミーをいち早く取り入れた国」についても関連しますが、欧州は政策やルールなどで決まりとして導入されている一方で、日本では、法律としての規制は最小限にとどめ、業界の自主的な取り組みを促進しているそうです。そんな中でも、まずは何から始めればいいのか、どうしたら貢献できるのかわからない、というようなお声をいただくこともありました。
例えば今回書籍掲載のために取材を行った、鹿児島県大崎町は20年以上、住民主導で資源分別に取り組み、ゴミの80%以上を再資源化されている自治体です。
長年蓄積された知見や情報を開いて様々な方の視察を受け入れていらっしゃいます。企業の方がいらした際に、大崎町の回収システムの中でご自分の会社の製品を見て、初めて「すてる」に目を向けたとおっしゃる方もいると伺いました。こうした製造するだけではわからない部分に目を向けることも、最初の一歩になるかもしれません。また、こうしたリサイクル率トップクラスの自治体でも、リサイクルが難しい残り20%の壁があるそうです。それは、今の製品は使い捨てされる前提で作られているものが多く、この壁を越えるには、製品設計から変える必要があるとされています。「すてる」ではなく「めぐる」に変えるには、その企業が属している業界や、取り組まれている事業がつくる一連の流れや他業種との関係性など、横のつながりを意識することもヒントになるのではという点は、本書の制作を通して感じたことでした。
ーサーキュラーな社会を作る上で、デザインはどのような役割を果たすのでしょうか。
先ほども少し触れましたが、循環型の社会をつくるには、不安感や面倒だと感じるようなネガティブな側面も含まれていると思います。すてるデザインプロジェクトでは、「そうすることが格好いい・面白そう」ということを導入の窓として掲げてきました。まずは、みんながワクワクするようなものをつくること、とプロジェクトリーダーの濱田教授はよくおっしゃっています。
デザインは、見目形が魅力的なものをつくるだけでなく、複雑な関係性を読み解くコミュニケーションや体験を提供するサービスなど、形のないものまで含む、私たちの社会を形作るあらゆる場面に関係しています。近年は政策などの社会の仕組みにもデザインが重要視されてきました。サーキュラーエコノミーは流行ではなく、社会の根っことして必要とされているものです。サーキュラーな社会を前提とすれば、どのようにデザインするかは確実に変化するでしょう。そのためには、今抱えている課題や状況を把握し、何を・どのように・どうやって先導するかも、デザインの果たす大きな役割になるのかと思います。
ー本書で紹介している事例の中で、特に秀逸なアイデアがあれば教えて下さい。
特に一つ、と選ぶことが難しいので、この本で紹介している事例をいくつかの視点でご紹介させてください。本書の第3章では、実際に循環とデザインを社会の中で実践されている方々の取り組みを、「Re〇〇〇」という8つのカテゴリーでご紹介しています。この「Re〇〇〇」とは別に、「DIYの循環」「地域の循環」「インフラとしての循環」といった視点から、循環とデザインのキーワードでの掲載事例をいくつか挙げさせていただきます。
「DIYの循環」の事例として、廃棄・中古になったプロダクトに3Dプリンタでパーツをつける、学生作品をご紹介しています。
3Dプリンタは個人の家庭レベルまで徐々に広がりつつありますが、例えばFabLabのような場所が図書館のように、地域の人が誰でも使えるような設備になるくらい浸透すれば、DIYのあり方が変わるような未来を示唆した作品です。この視点は、富山県南砺市利賀村にある合掌造りの宿泊施設「まれびとの家」を手掛けられた、VUILDさんのプロジェクトにも通じるものがあります。
VUILDさんはShopBotという3D加工機を使い、誰でも家具や建築物を作れるような取り組みをされています。彼らは、3Dデータを作る技術を持っていない人でも参加できるようなサービスも提供されているのですが、ものづくりの仕組みを整備しながら挑戦されていることに感銘を受けました。こうした取り組みの中には、技術が平準化した先に多くの人が参加できるものづくりの形が見えるのとともに、適正なものづくりを行うためにはデザイナーやクリエイターの役割が欠かせない点も含まれています。
「地域の循環」の事例は、例えば、北軽井沢を拠点にされているきたもっくさんや、川越を拠点にコエドブルワリーを営む協同商事さん、岩手県奥州市に拠点を持たれているFERMENSTATIONさんなど。
現在ご自身が向き合われているビジネスの拠点の価値を再構築し、それを高めて地域内の循環にも貢献しつつ、多くの人が関わりたくなるような素敵な場を提供するような仕組みづくりは、たくさんの気づきを与えてくださいました。また、長野県諏訪町を拠点にされているReBuilding Center Japanさんは、「家のなくなり方」にアプローチして、古い家の古材を再活用されています。
こちらの方がビジネスの拠点を長野に置かれたのは、取り壊される家から古材がレスキューされる機会の多い地方と、古材を活用する機会の多い東京や名古屋などの都市部から1~2時間程度でアクセスできることがポイントになったそうです。こうした地方と都市間の価値の繋ぎ方も、循環をデザインする上で注目する点なのだという気づきがありました。
「インフラとしての循環」の事例は、今回、2つの自治体での取り組みをご紹介させていただいています。どちらの方も、日本の中でリサイクル率トップクラスであり、長年、地域の方々と資源の循環に向き合っていらっしゃいました。近年は町の仕組みとしての循環をより発展させるために、町外への情報発信や、長年蓄積された知見を企業・学術機関などとの連携に積極的に取り組んでいらっしゃいます。企業の方の取り組みでは、ユニ・チャームさんは現在、紙おむつの水平リサイクルをインフラとして導入することを目指して、いくつかの自治体と廃棄物処理業者とともに実証実験を行なっていらっしゃいます。
こうした行政と市民、企業の連携から、私たちの日常を変える新しい社会の仕組みが生まれるかもしれないと思うと、とてもワクワクします。また、「インフラとしての循環」は町づくりの仕組みだけではありません。WOTAさんが提供されるWOTA BOXのように、災害などで都市のインフラが機能しなくなった際に供給できる仕組みには最先端の技術が使われており、直感で誰もが使える点は、細部にわたる配慮が込められています。
特に災害の多い日本では、こうした場面へ循環をもたらすような分野も今後が注目されるものかと思います。
ー2023年1月に開催された「すてるデザイン展」の反響はいかがでしたか?
この展覧会は、有楽町駅付近にあるGOOD DESIGN Marunouchiで開催した展覧会で、これまで、学生たちが授業のカリキュラムで取り組んできた作品や研究成果を発表する展覧会でした。私たちとしては、初めて使用する会場で、どのような客層の方に来ていただけるかなど、全く予想もできずにおりました。GOOD DESIGN Marunouchiを訪問されたことのある方はよくお分かりかと思いますが、様々なブランドの路面店やカフェなどと同じ道沿いにあり、大きな窓からギャラリーの中がよく見えるような場所です。今回は、窓辺にカバンや様々な生活雑貨アイテムとしてデザインされたプロダクトの作品が並んでいましたので、何かのお店のように思われて入られた一般のお客さまも多かったのですが、学生たちの話を聞きながら作品を鑑賞されているうちに、彼らが取り組んでいる課題に対して興味を向けてくださるなど、とても面白がって見てくださったのが印象的でした。立地的には、周辺のビジネスパーソンの方だけでなく、大きな駅が近いので、地方からの乗り継ぎで立ち寄ってくださる遠方の方や、海外の観光客の方など、幅広い層の方々がお越しくださり、反響の大きな機会にもなりました。
会期中は、作品を制作した学生たちが交代で会場に立ち、お客さまのご案内をしていたのですが、彼らはコロナ禍に入学した学生で、それまで自分の作品を学外で展示し、直接お客さんの声を聞くような経験ができずにいた世代でもあります。先生や同級生ではない視点で作品を見てもらい、何を伝えたいのかを説明する機会を得られたことは、彼らにとって自分たちが向き合っている課題がどのようなメッセージになるのか、ダイレクトな反応が得られ、刺激になったようです。
ー本書「すてるデザイン」をどのような人に読んで欲しいですか?
本書の制作にあたり、環境問題やデザインに関心があるけど、よくわからない…という初心者の方の入門編になるような一冊を目指していました。なるべく情報をコンパクトにまとめ、わかりやすい言葉で伝えられるように心掛けましたので、サーキュラーエコノミーとデザインを知る最初の一冊として手に取っていただけるとうれしいです。
また本書では、サーキュラーエコノミーに対するすてるデザインの役割について、永井教授がとても分かりやすい言葉で語ってくださっています。昨今様々な取り組みを実践されている方が多い中で、ビジネスを実践されている方に読んでいただけましたら、ぜひ感想を伺ったり、そこからディスカッションしたり、議論を深めてみたいです。