「批判的に見てもらいたい」〜横山裕一さんインタビュー〜
独自の表現方法から「ネオ漫画」と称され注目される漫画家、横山裕一さんの初絵本『ゴロゴロゴロゴロ なんのおと?』が4月24日に発売となります。
横山さんの表現方法の一つである「オノマトペ」が、ユニークな絵本の形になりました。そこで、絵本が生まれた背景や、本作をどのように読んでもらいたいかお話を伺いました。
横山裕一(よこやまゆういち)
武蔵野美術大学油絵科卒業。疾走感のある描線やオノマトペ、途切れることなく描かれる時の流れや独特なキャラクターが特徴となる作風は「ネオ漫画」とも称され、国内外で注目を集める。主な漫画作品に『ニュー土木』『トラベル』『NIWA』、『ベビーブーム』、『世界地図の間(ま)』(共にイースト・プレス)『アウトドアー』(講談社)『ルーム』(ハモニカブックス)『プラザPLAZA』(888ブックス)『ネオ万葉』(小社刊)など。著作の多くはフランス、アメリカ、イタリア、スペインなどでも出版され、高い評価を得ている。
32ページの絵本で表現できること
ーー今回初めての絵本ということで、絵本作りはいかがでしたか?
技術的な部分に関しては、漫画よりだいぶ楽でした。「いくらでも描ける!」と思いました。
ーー技術的な部分とは?
漫画は細かな説明を1コマの中に凝縮させなければならないのですが、今回は構成を決めた後にキャラクターや背景、吹き出し、擬音をバラバラに描いて、デザイナーさんに組み合わせてもらいました。
基本的に漫画に色はつけないのですが、今回の絵本ではデザイナーさんに色をつけてもらうという事情もあり、こうした描き方になりました。仕上がりは思い通りというか想像以上で、色がついた仕上がりを見るのがとても楽しみでしたね。
基本「構図ノイローゼ」なので、無駄なアキなどは細かく修正しましたが、いつもの漫画制作の細かさに比べたら、やりやすかったです。あとは絵本は漫画と違って枠線がなく、絵柄を自由に動かせたので、アキも細かくフレキシブルに調整しやすかったなと思います。
――他に漫画と絵本の違いを感じたところはありますか?
今回の絵本は32ページで、漫画に置き換えると16コマくらいのボリュームになります。ただ、漫画は16コマだけだとお話をつくりにくいのですが、絵本の限られたページ数だからこそ表現できるものがあるのだなと思いました。
子どもの本といえば鬼
――使用されている画材について教えてください
漫画では、つけペン(スクールペン)を使って描いていますが、今回はつけペン、水性マーカー(フロッキー)、ピグマの1ミリを使用しています。だんごの絵はピグマで描きました。ピグマは線の太さが安定しているので絵柄が固くなってしまうかなと思いましたが、色がついたことで硬さも気にならないと感じました。
――『ゴロゴロゴロゴロ なんのおと?』には、ユニークなキャラクターが登場しますね。鬼も出てきますが……
キャラクターは色々と考えたのですが、子どもにとって親しみやすいものを選んでいます。赤鬼ですが、子どもの本といえば鬼かなと思いまして。あまり自分はキャラクターに善悪をつけないのと、ステレオタイプの日本人にしかわからないキャラクターは使わないようにしています。
鬼はステレオタイプのキャラクターではあるのですが、子どもには受け入れやすいかなと思い、この絵本ではあえて鬼を登場させました。
――ちなみに横山さんにとって思い入れのある絵本はありますか?
『泣いた赤鬼』(浜田広介/作)です。赤鬼が泣いている素朴な絵が表紙だったのですが、妙に印象に残っています。
また、風船が飛んでいるだけの文字のない絵本(タイトル不明)も心に残っています。
少しでも変な感じに!
――最後に『ゴロゴロゴロゴロ なんのおと?』を子どもたちにどのように楽しんでもらいたいですか?
絵本らしい絵本にならないように気をつけて作りました。表紙も絵本らしくないものになっています。「少しでも変な感じに!」を心がけてできた絵本です。
なので、自由に楽しんでもらいつつ、疑問を持って絵を見て、読んでもらいたいです。たとえば「鬼の胸に“?!”が描いてあるのはなぜか?」とか「なぜこんなこと起こるのか?」とか「ヒヨコに角があるのはなぜか?」と批判的に見てもらいたいなと。
批判的なものの見方ができない大人にはなってほしくないので、粗探しをしてください。信用するなという感じで(笑)
スピード感とユーモア溢れる横山ワールドをぜひお楽しみください!