『トドにおとどけ』ができるまで 〜大塚健太さん&かのうかりんさんインタビュー〜
海の生き物の違いもわかるユーモア絵本『トドにおとどけ』はどのようにして誕生したのでしょうか。著者のお二人に制作のエピソードを伺いました。
作・大塚健太
埼玉県出身。おはなしを手がける絵本作家。絵本作品に『とびません。』『なまけていません。』『うごきません。』『おにゃけ』『でんにゃ』『虫にんじゃ』(パイ インターナショナル)、『いちごサンタ』『おやつトランポリン』(白泉社)、『いちにちパンダ』(小学館)、『フンころがさず』(KADOKAWA)、『あなたのなまえを』『イカはイカってる』(マイクロマガジン社)、『ちんあなごのちんちんでんしゃ』(講談社)、『いないいないぞう!』(岩崎書店)など。https://otsukakenta.com/
絵・かのうかりん
愛媛県出身。東京造形大学彫刻専攻 卒業。動物や自然などを生き生きと描く。『いろんなおめん』で第6回Be絵本大賞入賞。絵本に「かなしきデブ猫ちゃん」シリーズ(愛媛新聞社/集英社文庫)、「どろぼうねこ」シリーズ(文芸社)、『おやすみ おやすみ みんなおやすみ』(金の星社)、『まねっこ にゃんころもち』(PHP研究所)など。
https://www.karinkano.com/
ー見た目がそっくりな海の生き物がたくさん出てくるストーリーは、どのようにして生まれたのでしょうか?
大塚健太さん:
いわゆる海獣と呼ばれる仲間たちですね。私自身、その違いや特徴は、ぼんやりとしかわかっていませんでした。水族館で彼らが泳いでいる姿を見ても「これはアシカか?いや、アザラシかもしれない。セイウチではなさそうだけど、オットセイという可能性もあるな……。いや、意表をついてオタリアだったりして」と、自信を持って言いあてることができませんでした。きっと同じことを思っている人も多いんじゃないかな、というのが発想のはじまりです。でも、ただ違いを紹介するだけような絵本にはしたくなくて、あくまで絵本のおはなしとして楽しく面白いものを、と心がけました。
ー初めてストーリーを読んだとき、どんな風に感じましたか?
かのうかりんさん:
とにかくおもしろくて、声に出して笑ってしまいました。私も海獣が好きなので、絵を描かせて頂くのが楽しみになりました。
ー「トドにおとどけー。」という印象的なセリフを真似する子が多いようです。ダジャレにしようとはじめから意識されていたのでしょうか?
大塚健太さん:
海獣たちの中で、だれを中心に据えるか、というのは初めは決まっていませんでした。そんな中で「トドにおとどけ」というフレーズがあるとき浮かんで、トドに何かを届けるお話しにしたら楽しい物語ができそうだと思ったんです。ダジャレが出発点ではありますが、そんなに意識はしてなかったかな。「トドにおとどけー」のセリフをまねしてくれてとても嬉しいです。
ー動物たちの生き生きとした表情がとてもキュートです。中でもカモメのキリッとした目つきがたまらないのですが、どのような思いが込められているのでしょうか。
かのうかりんさん:
カモメ(?)さんは、普段は無表情ながらも、あせっている時はさすがに顔に出てしまう、わりと人間みのあるタイプとして描きました。
ーお話の中で特にお気に入りの場面があれば教えてください。
大塚健太さん:
探していたトドくんが、やっと見つかったシーン。「トドです!」のストレートなセリフも気に入っています。かのうさんの、ドーンとインパクトある絵も魅力的ですね。
ー絵を描いていて特に楽しかった場面はありますか?難しかった点や苦労した点がもしあればあわせて教えてください。
かのうかりんさん:
トドさんを驚かせるため、みんなでばっちりパーティースタイルできめてるシーンを描くのが楽しかったです。空の色を描くのも好きなので、流れる時間が表現できていたらいいと思います。難しかったり苦労した点はなかったです。ずっと楽しいなーと思いながら描いておりました。
ーラストの展開が衝撃的で、何度でも繰り返し読みたくなります。読み聞かせをする際のコツがあれば教えてください。
大塚健太さん:
「だれでも読みやすいように」ということは意識して作っていますが、読み方については、ラストも含めてホントに自由でいいと思っています。「トドにおとどけー」というセリフも、読む人それぞれの個性があっていいと思います。鳥さんの表情がだんだんと変化していく様子に注目してみたり、鳥さんの気持ちを想像しながら読むと、より楽しく読めるかもしれませんね。
ー最後に読者へのメッセージをお願いします。
大塚健太さん:
楽しい絵本ができました。読み聞かせにも、プレゼントとしてもぜひ。トドのつまり、この絵本をあなたにもおトドけしたいってこと!
かのうかりんさん:
トドにおとどけ、楽しく読んでくださってありがとうございます。トリさんの正体は、みんなには秘密にして読んでくださいね。
(おわり)