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    【第1回】中古住宅のリノベーション第2章を思い立つ

    【第1回】中古住宅のリノベーション第2章を思い立つ

     

    わたしの家のこれまでのストーリー

    2010年、子育てと仕事を両立するために、それまで14年間住んだ東京から、両親や姉家族と行き来がしやすい出身地の千葉に引っ越すことにした。
    わたしも夫も古い家具や道具が好きだから、味わいのある中古物件に狙いを定め、日夜ネットで住宅情報探し。下見も20軒以上はしただろうかというタイミングで、とうとう「運命の家」と出会った。




    そこは当時で築年数35年の、老夫婦が2人で暮らしていたという純和風住宅。縁側と広い庭に一目惚れして、その味わいを残しながら住み継いでいこうと決めた。
    年数のわりに家の造り自体はしっかりしていて、住もうと思えばそのままでも住めるコンディションだったが、無垢の檜材を使った縁側以外は、和室なのに床はクッションフローリングにしてあるなど中途半端なリフォームの跡が気になった。
    そもそもこの物件は、木造住宅の耐用年数とされる20年を優に越えていることから建物の価格はゼロ円、つまり土地代のみの値段で購入できた(もちろん東京とは比べものにならないほど安い)。そこで1500万円という予算で大規模なリノベーションを行うことにして、和風住宅を得意とする建築家に改修設計を依頼した。




    ところが地盤の改良工事に約200万円という想定外の費用がかかったのと、部屋数も多いため、予算内でのフルリノベーションはかなわなかった。優先順位の高い方から改修する場所を決めていった結果、1階はリビング&ダイニングをスケルトン状態にして大々的に改修し、キッチンやバスルームなど水回りの設備も新しく入れ替えた。2階は夫のアトリエだけはリノベーションできたが、それ以外の和室や納戸、予備のトイレはひとまず既存のまま使うことになった。
    もちろん、それらの部屋についてはいずれ部分リノベーションをする前提で住み始めたのだが、竣工からあっという間に9年。いよいよその時機が来た。

     

    「愛着の差」が年々開いていく現実

    2階のリノベーションに踏み切った理由は、大小数えればいくつかある。
    まずひとつは、9年前にリノベーションした部分と、できなかった部分に対して、愛着の差がどんどん開いていくのを感じたこと。

    既存のまま使っているという点では、1階の縁側と障子などの建具類も同じだが、それらは自分たちが気に入ってあえて残したものであり、むしろリビングの設計は縁側のトーンに合わせながら、わたしたちが思い描く和洋折衷の住まいを建築家が具現化してくれたものだ。当然好みの空間であり、愛着は年月を重ねるごとに増していく。


    一方、改修の予算がないという理由でリノベーションしなかった2階の部屋は、何年経っても「暮らすのに不便はない」という域を出ない。
    2つある和室のうち、1つは夫婦の寝室、もう1つは娘の部屋で、納戸は物置として使っているが、壁や床や天井の材が好みでないせいなのか、どんなに片付けても、1階のように身を置いているとじわっと幸せを感じるような部屋にならない。それどころか、襖のすべりが悪くなったり、障子紙が破れたりしたときは修復の手間に苛立ってしまい、「わたしはこの部屋をあまり大切に思っていないんだな」という現実に向き合わされる。


    それでも、2階という普段ほとんど家族しか使わない部分であることから、その中途半端な存在にも、それをもてあましている自分にも見て見ぬふりをしてきた。
    そうして年月をやりすごしていたあるとき、雪見障子のガラスに物が当たってヒビが入るというアクシデントが起こった。さすがにガラスは危ないのですぐ工務店に修理の見積もりをしてもらうと、とくに思い入れのないその障子のガラスを入れ替えるのに数万円かかると聞いてショックを受ける。

    そのとき、9年前に先送りした2階のリノベーションのタイミングは今ではないか、と思った。
    この家とわたしの気持ち、両方の中途半端さの元凶が2階にあるのなら、そこを愛着の持てる空間に変えればいい。そうすれば、もっと家のすみずみまで大切にしながら暮らしていくことができるのではないか。
    中古住宅との出会いから始まった、わが家のリノベーションストーリーの第2章が、ここからスタートするのだ。

     

    誰と一緒にリノベーションするか

    1階のリノベーションは、わたしたち夫婦のはじめての家づくり体験にして、純和風の家の持ち味を生かしながらモダンに再生させるという(少なくとも当時のわたしたちにとっては)難しいプロジェクトだったため、ベテランの建築家と工務店に主導してもらった。
    さすが「プロの仕事」と呼ぶのにふさわしい仕上がりで、住まいの設計についてもたくさん勉強させてもらったし、住み心地にも満足している。建築家の方とも大工さんとも、今でもよい関係を続けているので、本来ならば同じ相手にそのまま続きを頼むのが妥当だろう。

    でも結果的にそうしなかったのは、今回のリノベーションではDIYに挑戦したいという気持ちがあったからだ。そもそも「住みながらの工事」になるわけだし、この9年間で家のあちこちに簡単な棚を作ったり、壁や扉をペイントしたりするDIYを気軽にやっていて、作業の楽しさはもちろん、自ら手をかけた箇所にはとくに愛着が湧くことを実感していた。


    この家の顔ともいうべき1階のメイン部分は、プロの手で美しく再生された。ならばプライベート空間の2階は、多少素人っぽくともDIYでリノベーションしてみるのも面白いのではないか。それに費用の面でも安く上がるし(予算が少ないという事情は今回も変わらない)、自分が作業の現場にいる分、細かなディテールにおいて好みやこだわりをかなえやすいだろう。

    とはいえ、もちろんリノベーションのプロを確保しなくては、何から手をつけていいのかさっぱりわからない。DIYもリノベーションも世間的な需要は増えているはずだから、「施主自ら参加できるリノベーション」を提案している設計事務所や工務店もきっとあるはず……とネットでリサーチを始めると、「わたしたちは、参加型リノベーションを専門とする市川市の工務店です」というキャッチコピーを掲げた「つみき設計施工社」のサイトに行き着いた。

    わたしたち夫婦より一世代若い、80年代生まれの建築家夫婦が主宰するその工務店のコンセプトと、紹介されている過去の施工事例の記事を読んでいくうち、2階のリノベーションを一緒にやってくれる相手を見つけた、という直感があった。
    さっそくウェブサイトのコンタクトフォームからメッセージを送ると、すぐに感じの好い文面の返信があり、2週間後に彼らのオフィスで第1回目の顔合わせを行う約束となった。

    うん、なかなか幸先がいい。これまでの経験から、大きなプロジェクトを共にする相手とは最初からテンポよく事が運ぶことが多く、すると後々の展開もよいということでわたしと夫の意見は一致している。
    さらに、今回のリノベーションはなるべく地元の人とやりたいと考えていたが、打ち合わせに出向いてみると、つみき設計施工社と我が家は車で20分足らずという近さだった。ますますいい予感がする。(つづく)

    小川奈緒プロフィール

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