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    【第2回】設計士とDIYリノベーションのプランを練る

    【第2回】設計士とDIYリノベーションのプランを練る

    つみき設計施工社との出会い

    家の2階をDIYでリノベーションすることを思い立ち、すぐ取りかかったのは、そのDIYをサポートしてくれるプロを探すことだった。

    古い物件を自分たちの手でリノベーションする。それがカフェやショップならば、多少ゆるい作りでも、すべてはハンドメイドの温かみという魅力になる。けれど、うちの場合はこの先も長く暮らしていく家の改装。DIYといっても、床がガタガタ鳴ったり、扉が開閉しづらかったりでは困るし、そもそも「家のすみずみまで愛せるように」というのがリノベーションの目的だから、あくまで「暮らしやすい家」は絶対条件にしたい。そのためにはプロの手を借りることが必要だ。

    ネット検索で見つけた「つみき設計施工社」の事務所は、うちから車で20分足らずの住宅街にあった。メンバーは、ともに京都大学と同大学院で建築を学んだ同級生という河野直さんと桃子さんご夫婦を中心に、彼らと同窓の夏目奈央子さん、「施主とともにつくる」と掲げたコンセプトに共感して門を叩いてきた20代の若いスタッフたちで構成されている。

    つみきさんはリノベーションの施工だけでなく、DIYのワークショップも度々開催していて、その活動内容を紹介した著書『ともにつくる DIYワークショップ』を初回の顔合わせ前に読んだ。彼らの建築に対する考え方、プロの大工さんの職人仕事への敬意、それを施主のDIYとどうつなげるかを追求する姿勢を好ましく感じた。

    顔合わせの日は、自己紹介の後に具体的な話もしたいと思い、あらかじめ資料を用意した。家全体の図面のほか、2階でリノベーションしたい箇所を書き込んだ図面、さらに別紙に「6畳子ども部屋・床を畳から天然木フローリングに・砂壁をベニヤ壁に」など、部屋ごとの工事の内容を箇条書きしたもの。また、わが家の雰囲気と好みを伝えるため、著書の『家がおしえてくれること』や、過去にインテリアの取材を受けた雑誌も持参した。

    9年前、はじめての家づくりでも満足な結果が得られたのは、家づくりのパートナー(前回の場合はベテランの建築家と工務店)に恵まれたことは第一として、施主として好みや要望は遠慮せずに伝え、コミュニケーションをちゃんと取ったことも大きかったと思っている。

    その成功体験によって、自分が一から建てたのではない中古住宅でも、残す部分と変える部分を緻密に組み合わせてリノベーションすれば、新築より自分らしい家にもなり得る、と信じられるようになった。

     

    • Pinterestで効率よくイメージ探し

    河野夫妻との設計打ち合わせは、2回目以降はすべてわが家で行われた。

    二人は手際よく室内を計測し、床や壁の内部や下地を調べ、建具類は再利用できるのか、あるいは新しく作り直すべきかを見極めていった(わたしは再利用できるものは再利用し、経費も廃材もなるべく抑えたいと伝えていた)。

    3回目の打ち合わせには模型を持って来てくれた(リノベーションで模型を製作してくれるなんて!と感激)。おかげで、こちらも完成図を立体的にイメージすることができたし、壁や床の木材や、それを塗る塗料についても、サンプルを見せながら新鮮で魅力的な提案をしてくれた。

    家づくりは、決めなくてはいけないことがとにかく多い。木材や仕上げ材を何にするかはもちろん、トイレや洗面台の製品選び、建具の金具パーツ、コンセントのカバーのデザインまで……どれも自分好みの空間にするために必要な、胸躍る作業のはずが、情報も選択肢も無限に感じて途方に暮れることもある。するとそこへ、「Pinterest(ピンタレスト)」でイメージサンプルの画像を探すといいですよ、と桃子さんがアドバイスをくれた。

    Pinterestは、キーワードを打ち込むと、その検索ワードに近いイメージ画像をウェブ上から集めてくれる写真共有サイト。

    たとえば、夫婦の寝室である和室を、モダンな古民家旅館風にしたいとアイデアが浮かんだら、Pinterestの検索欄に「古民家旅館」と打ち込んでみる。すると次の瞬間には、パソコンの画面いっぱいに雰囲気のいい古民家や和室の画像がズラリ(ときどきわが家が取材されたウェブの記事の画像が混ざっていて驚いた)。

    その中から「いいな」と感じた一枚を選んでクリックすると、次の画面では、先ほどの「いいな」の写真の類似画像や関連する画像がまた集められて表示され、それを何度か繰り返すうちに、だんだん自分が本能的に求めているものがわかってくる。パソコン作業なので、役立ちそうなアイデアや具体的な商品情報の画像をどんどん保存しながら、仕事の合間に効率よくインテリアプランを練ることができた。

    こうして、子ども部屋、夫婦の寝室、トイレ、洗面所など、部屋ごとの空間イメージに加えて、造作家具のデザインやペイントの色見本まで、Pinterestで参考画像を集め、それらをプリントアウトした束を河野夫妻に渡すと、そのイメージサンプルに沿って設計プランを詰めてくれた。

    当たり前のことだけれど、自分の頭の中に浮かんでいるイメージは、曖昧な言葉を並べるだけでは、たとえ家族とでも共有するのはむずかしい。逆に、目指すイメージをビジュアルによって家づくりのチーム内で共有していれば、初めて組む相手とでも「こんなはずじゃなかった」なんて結果にはならないと思う。

     

    • 照明からインテリアを考えていく

    まだ工事に入る前、というより設計の途中で早々と動いたのが、各部屋の照明選びだ。インテリアの中でもとくに照明は好きで、9年前のリノベーションでは、やはり照明へのこだわりが強い建築家と、設計の打ち合わせをしながらも「どこにどんな照明を吊り下げるか」という話題でいつも盛り上がった。

    照明のデザインが早い段階で決まっていると、たとえば木部の色味や取っ手の金具といったディテールもおのずと決めやすくなる。今回のリノベーションでは、元の和室から自然に派生したようなレトロな洋空間に変えたくて、わたしはまたPinterestで「昭和レトロ, インテリア, 照明」などとワードを入れながら、各コーナーの照明プランを詰めていった。

    検索を進めるうち、しだいに文化財の建物や、昭和初期が舞台のドラマなどで見覚えのあるクラシカルな照明に的がしぼられてきた。そうした照明を現在も製造販売している墨田区の「石垣商店」という工場を探し当て、ネットで購入する前に現物を見せてもらいに出かけると、イメージ通りの上に価格もお手頃。なので、寝室と子ども部屋、洗面所の天井と壁、納戸用と計5個の照明をそちらで揃えた。

    一方、ベッドサイドの読書用照明には、当初は北欧のランプを考えていたが、検索の中で「Flame」という兵庫県の照明メーカーの壁付けタイプを見つけてピンときた。「Flame」は、購入前にサンプルを貸し出してくれるとわかり(なんてありがたいサービス!)、すぐ取り寄せてみると、候補にしていた北欧メーカーの照明よりも首振りの角度が広くて使い勝手がよさそう。しかも価格はほぼ半分である。ベッドの両側に設置するために2個購入することを考えると、ここは日本製を選ぼうという決断に夫も賛成だった。

    このように2階のリノベーションのための照明選びは、Pinterestのおかげでずいぶんスムーズだった。

    そして、この照明選び先行型のリノベーションを9年前と今回とやってみた実感として、案外これはいい方法ではないかと思っている。本来ならば家づくりがすべて終わり、最後に吊るすはずの照明を、最初に購入してスタンバイさせておくことで、ゴール(照明を吊るす日)に向かって、迷ったり立ち止まったりせずに進んでいける気がするから。

    そうそう、もう一つ工事直前にやったことといえば、納戸の本棚にあふれていた蔵書の整理がある。近所の古本屋さんに出張買取を依頼し、ごっそり持って行ってもらった。当然、家の中の荷物はなるべく少ない方が作業はしやすいから、物をなかなか手放せない夫にもこんまりさんの本や番組を見てもらい、がんばって片付けに励んだ。

    大きなことからささやかなことまで、こうしてリノベーションに関連するさまざまな事柄を一つ一つこなしていくうちに、いよいよ工事が動き出す実感も湧いてきたのである。(つづく)

    小川奈緒プロフィール

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