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    【第3回】いよいよ大工工事がはじまった

    【第3回】いよいよ大工工事がはじまった

    大工さんによる下地作りの2週間

    リノベーションの設計プランは、2018年12月から始まり、翌年2月まで、つみき設計施工社さんとメールやミーティングを重ねながら固めていった。年末年始をはさみながらもお互いにスケジュールは守り、テンポよくやりとりできたことで、いいテンションを保ったまま設計から工事へと流れていくことができた。

    できれば梅雨入り前に工事を完了したい、という希望を最初に伝えていたので、着工はその3ヶ月前、3月上旬に決定。大工工事は寒さより暑さの方がつらいそうだが、一年の中で気候が最も安定している3ヶ月で、庭を使っての作業もしやすいから、工事をこの期間に設定したのはよかったと思う。

     

    工事初日は快晴。朝8時半、大工の忍田孝二さん、つみきの河野直さんと田中拓人さんがたくさんの木材と道具を携えてやってきた。

    大工工事は一般的に始業が8時、終業が夕方6時、その間10時と12時、午後3時に休憩をとるというが、我が家はスクールゾーン内にあるため、通学路の往来が落ち着く8時半をスタート時間にしてもらった。

    つみき設計施工社さんが立ててくれた工事スケジュールは、初日からいきなり施主(つまりわたしたち)のDIYをスタートさせるのではなく、最初の2週間は大工さんのプロ施工によってリノベーションの下地作りをしてもらい、3週目からつみきさんと施主が工事を引き継いで、DIYで完成させるというもの。その中でも部分的に難易度の高い作業や、素人には危険が伴う作業についてはつみきさんが受け持ってくれる。

     

    今回リノベーションする2階の部屋たちは、家族の寝室として使っている6畳と8畳、洗面所とトイレと廊下、そして納戸。そのうち納戸以外の床をすべて貼り替えたのだが、忍田さんは2週間で、主に娘の部屋(6畳の和室)の床の貼り替えと、これまで襖で仕切られていた8畳の隣室との境界に壁を作ってくれた。同時進行で、つみきの田中さんが毎日来てくれて、洗面所とトイレと廊下の床貼りを進めてくれる。

     

    床を貼り替えると一口にいっても、ただ畳やクッションフローリングをはがして新しい板を貼れば完成、という単純なものではない。まずは専用の水平器を使って現状の床のゆがみや傾きを確認するのだが、計測すると、築40年超の木造家屋であるわが家は、やはりあちこちに傾きがあることがわかった(どんな家も多少はゆがんでいるものらしいのだが)。それを最大限水平な床に近づけるべく、根太(ねだ・床の下地材)をカンナで削って1本ずつ太さを調節するという地道な作業が黙々と行われる。その工程をちょこちょことのぞかせてもらいながら、わたしが知るなかでは料理や手芸もまさにそうであるように、大工工事も「下ごしらえ」、つまり下地の仕事をていねいにすることがとても大事で、そこがかなえられてこそ美しい仕上がりと快適な住み心地を導きだせるのだろうと感じた。

     

    大工さんがお昼以外に午前と午後にも必ず休憩をとるのは、それだけ集中力と体力をフルに使う仕事だからで、わたしも様子を伺いながら、なるべく1階のダイニングテーブルにお茶とお菓子を用意し、工事の話を聞くようにしていた。

     

    • 家が変化する過程をライブで観察できる贅沢

    リノベーションする箇所のうちメインの2部屋は寝室のため、工事期間中はリビングに寝ることも覚悟していたのだが、つみきさんの配慮で、2部屋のうちどちらかは寝られる状態にしながら工事を進めてもらえたのはありがたかった。

    ちょうどいい機会だからと新しく交換することにしたトイレの便器が工事日より早く届いてしまい、大きなダンボールがしばらく玄関ホールに置いてあったり、縁側の軒下にはブルーシートで覆われた木材が3ヶ月間横たわっていたが、リビングとダイニングはなんとか平常の状態をキープできたため、工事期間中に雑誌の取材(撮影もあり)を自宅で受けるという荒技もやってのけた。

     

    それでも、家の中に工事現場があるというのは、やはり落ち着かないものである。職業柄わたしも夫も自宅にいる時間が長いことも無関係ではないかもしれないが、いつもと違う睡眠環境で疲れが知らず知らずたまってくるし、工事がない日曜日も完全にはくつろげない感じ。だからたとえ仕事が忙しくなっても、最初に立てたスケジュールを簡単には変更せずに、なんとしても5月末完了を目指そうと夫と話し合い、つみきさんにも意向を伝えていた。

     

    心身が落ち着かない一方で、よいことももちろんある。何より家の変化の過程をライブで体感できるのは大きな魅力だ。9年前、まだこの家に引っ越してくる前に1階のリノベーションをしていたとき、1、2週おきの頻度で現場をのぞきに来たが、自分の家となる場所なのに大工さんたちにお客さん扱いされて(当たり前かもしれないが)、微妙なよそ者感に複雑な気分になった記憶がある。それに対して今回のリノベーションは、工事は今どれくらいまで進んでいるのかをリアルタイムで確認できて、それは住人としての安心感に直結するものだった。

     

    • 工事をしやすくするための「片付け」

    工事の間、借り住まいの家に引っ越すわけではないから、床を貼り替えるには、一度その部屋の荷物をすべてどける必要がある。わが家には余分な部屋がないため、その場しのぎで荷物を隣の部屋に移動させるだけでは、今度は寝る場所がなくなってしまう(もしそうなったらいよいよリビングで寝るしかない)。

    加えて、作業に必要な大工道具もたくさん持ち込まれるわけだから、工事をスムーズに行ってもらうためには、やっぱり荷物の量を大幅に減らさなくてはならないのだ。だから工事前から、工事が始まってからもずっと、大きな家具から小さな雑貨まで不要なものを見極めては運び出し、少しずつ2階に空間の余裕をつくっていった。

    普段から、単に捨てるか残すかの二者択一ではなく、リサイクルできるものはなるべくしたいと考えているけれど、今回の片付けをきっかけにIKEAの家具還元サービスという便利なシステムを知ったので、ここに書いておくことにする。娘の洋服収納に5年ほど使っていたIKEAのスチールラックがあり、ひょっとして店でリサイクルをしてくれないだろうかと調べてみると、ウェブサイトから下取りの申し込みができた(ベッドやマットレスなど引き取り対象外品もある)。家具の画像を送り、査定メールが送られてきた後に店舗に持ち込むと、その場で引き取ってくれて(しかも状態によってショッピングポイントも還元される)、引き取られた家具はメンテナンスを施してからアウトレットで販売するという。

    大きな家具は、買い取ってくれるリサイクルショップや欲しいと手を上げてくれる知人が見つからなければ粗大ゴミに出すしかないから、販売店側がこうしたリサイクルを行ってくれるのは、とても助かる。

     

    • プロ直伝「大工道具の使い方」

    大工の忍田さんによる2週間のプロ施工期間もそろそろ終わるタイミングで、翌週から始まるDIYのために、フローリング貼りのレクチャーを受けた。忍田さんは道具の使い方や注意点をまとめた自作のプレートを使いながら、何をどう使うと便利なのか、また使い方を間違えるとどんな危険があるのか、ということをわかりやすく教えてくれた。

    電動のインパクトドライバーは、うちにもあるから使ったことは何度もある。でもドライバーを持つ角度があることや、ビット先端で火傷する危険性などについては知らなかったし、いざ知ってみると、そうしたことを知らずにDIYに手を出すのは実はとても怖いことなのだということがわかった。

     

    フローリングを一枚ずつ貼る毎に、木材の裏にボンドを塗り、板をはめてキリで穴を空け、ドライバーでビスを数カ所打ちこむ。その工程一つ一つに、作業が効率よく進んで仕上がりもきれいになるためのちょっとしたコツやテクニックがあって、それをプロが伝授してくれるというありがたい機会だった。

    結局その日は教わりながら2列分だけ貼り、残りはすべて忍田さんが仕上げてくださったのだが、その「お手本の部屋」があったおかげで、自分たちの手で行う隣室のフローリング貼りもスムーズだったし、その結果、少なくとも素人目にはさほど歴然とした差を感じないくらいにきれいな床に仕上げることができた。

    次からは、そうしてDIYで完成させた部屋たちを、工事のプロセスとともに一部屋ずつ巡っていこうと思う。(つづく)

    小川奈緒プロフィール

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