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    『アタマとカラダでわかるデザイン』の話を杉崎先生にきいてみよう|その4|文字でしゃべる

    『アタマとカラダでわかるデザイン』の話を杉崎先生にきいてみよう|その4|文字でしゃべる

    PIE松村(以下PIE):今回のテーマは文字です!いや〜テンションが上がります(←文字好き)。いろいろと教えてください!

    杉崎真之助(以下杉崎):松村さんの街の文字を発掘するシリーズも楽しいですね! あらためて考えると、看板も、広告のコピーも、コンビニの商品も、グラフィックデザインの世界は、文字、もじ、モジ、Mojiしています(笑)。


    PIE松村が採取した街の文字たち

    PIE:ありがとうございます!街の文字観察はライフワークとなっています。グラフィックデザインにおける「文字」や「書体」にまつわることはいくら学んでも終わることがありません。「タイポグラフィ」という言葉をよく聞きますが、そもそもどういった意味なのでしょうか?

    杉崎もともとは金属活字の導入で印刷の版を組むというテクニックからはじまっています。でも、タイポグラフィを「タイプ=活字」と「グラフィック=視覚的な表現」のふたつを組み合わせたコトバと考えると、イメージがどんどん広がっていきます。いまではグラフィックデザインのど真ん中にある大きなチカラです。

    杉崎1年間の作品を集めた『日本タイポグラフィ年鑑』を見るとタイポグラフィの幅広い世界がよくわかりますね。

    PIE:杉崎先生も所属の日本タイポグラフィ協会が編集されている年鑑本ですね。たしかにロゴタイプや書体、パッケージなど多ジャンルに渡った作品が掲載されています。

    杉崎よく、かわいく縮めて「タイポ」っていいますが、これは「誤植」(typographic error)のことを指す表現でもあります。
    しかしタイポグラフィって、なんだか難しく聞こえます。ですから『アタマとカラダでわかるデザイン』では、大事なコツを抜きだして、とても簡単に理解できるようにしました。作るのは逆に大変でしたが(笑)。

     


    本文p.207より

    PIE:これはなんと杉崎先生が小学校3年生のころに作った学級新聞なんですね。本の中では「生まれてはじめてのグラフィックデザインだったかもしれない」と書かれていますが、同時に「はじめてのタイポグラフィ体験」だったことになりますね。

    杉崎あ、そういわれてみると、そうですね! 私の小さな頃は、身近に新聞紙がどこにでもあった時代です。1行がいまより小さな文字で15字詰め、1ページが15段で組まれていました。そのルールや誌面構成になんとなく興味がありました。両親が学校の先生で、家にガリ版の印刷道具があったので、新聞を作ってクラスで配ったんです。
    段と段を区切る線の間に、見出しや本文、図版やマンガを配置しました。一生懸命に作りましたが、いま見ると、なんともヘタです。もちろんレイアウトもデザインのひとつなのだとは、まったく思ってもいませんでしたね。

    PIE:本物の新聞さながらのレイアウトも素晴らしいのですが、学習要素とエンタメ要素がバランスよく詰め込まれている見事な編集内容ですね。また、これが保存されていたことも驚きです。

     


    本文p.108より〜私たちは文字を「読む」と同時に「見る」のです。文字を重ねるとコトバの音や意味が消え、カタチだけのテクスチャーとなって「書体」の表情が現れます。

    PIE:左側がゴシック体で右側が明朝体ですかね。重ねる前の文字は「原形」でしょうか。原形をとどめていませんが……。

    杉崎ふたつの文字を重ねているだけですが、読めません。文字はまず読んでしまいます。読めてしまう文字のカタチだけをを見るにはどうするか?
    それでわざと文字を重ねて読めなくしてみる。読めなくなると、今度は書体の雰囲気や特徴が浮きでてきます。

    PIE:「松村」で試してみました。同じ木偏なのでなんとなく読めそうな状態になってしまいました。

    杉崎木偏が共通だから松村ロゴマークとして成立するかもしれません。

    PIE:「松」と「村」で木偏のカタチが違っていることに驚きました。

    杉崎同じ木偏でも、実際にはひと文字ずつ微妙にバランスを調整しています。

     


    本文p.114より

    PIE:なにやらラブレターのようなキュンとする文面ですが、4種類の組み方になっています。同じ書体でもずいぶんと印象が変わってくるんですね。

    杉崎位置変更=タイポグラフィは、文字のしゃべり方をデザインすること、ともいえます。それぞれ上下のブロックで、1行だけを見比べると、どちらも同じサイズです。ところが、行と行の幅が変わると印象が違って見える。
    さらに、文字のサイズの違う左右のブロックで比べてみると、文字だけでなく声の大きさが違うように感じる。文字の組み方だけで、キュンの気持ちを、自由に変えられるんです。

     


    本文p.138より

    PIE:こうして「0」だけをいろいろな書体で並べてみるとそれぞれの書体の特徴がわかってきておもしろいですね。たとえばよく使われる書体の「Times New Roman」と「Garamond」だけ見比べてもぜんぜん違うフォルムです。

    杉崎「書体の顔」が「タイプフェイス」。文字にはそれぞれ顔つきがある。ひとつの書体は文字の数だけ表情を持っています。
    書体は、顔つきのそろったひと組の「フォント」を文章に組んで使います。ですから、ひと文字、1行、文章全体、3つの視点で書体を選ぶのがコツなんです(p.154)。

     

    PIE:このぼんやりとした「0」は上記の書体を重ね合わせて作ったのでしょうか。輪郭が定まらない幻想的な印象です。

    杉崎ゼロは存在するのか、しないのか? なんだか哲学的になってきました(笑)。
    ひとつの文字を選んで、いろいろな書体を重ねてみる。すると、それぞれのタイプフェイスの輪郭が曖昧になってきて、文字の骨格、つまり「字体」がぼんやりと浮かび上がります。本ではこの話が「文字の体」に続いていきます。


    本文p.133より

    PIE:最後に、日本語の問題点について、もう少し詳しく教えてください。

    杉崎日本語のタイポグラフィをアタマとカラダでわかるためには、デザインの前に、少し文字の歴史をおさらいするのがコツなんです。
    たとえば、仮名のカタチは漢字が元になってできたものです。日本では意味を表す漢字と音のみの仮名を組み合わせて使う。さらには、漢語と和語が交じっている。とっても複雑です。日本語って漢字と仮名の使い方の試行錯誤の歴史だと思いませんか。

    PIE:たしかに!いま私たちがあたり前に使っている仮名交じり文=漢字と仮名のハイブリッドなスタイルは、先人たちが積み重ねてきた歴史の結果だといえますね。

    杉崎あたり前に使っている「日本語の問題、難題、課題」を知ると、日本語の文字組が違った角度から見えてくるようになります。タイポグラフィをおもしろく理解していくコツはここにあるのかもしれない!

    PIE:デザイナーは、DTP以前、写植文字を切り貼りして版下を作成していましたが、昨今ではデザイナー自身がInDesignやIllustratorなどのアプリケーション上で組版をするようになりました。時代の変化に伴う日本語組版についてご意見があればお願いします。

    杉崎いままでお話ししてきて、書から木版、活字、印刷まで、日本語と日本語の文字組は、もともと「フリースタイル」で、柔軟に発達してきたんだとあらためて思います。やわらかいタイポグラフィ。表現力が備わっている。
    ところがDTPは、物理的な制限がないぶん、自己流の文字組で安心してしまう。だからこそ、時代をさかのぼって金属でできた活字で印刷の版を組むという物理的な「不自由さ」も知っておくといいんです。
    この両方でタイポグラフィはコワイモノなし。アタマとカラダでわかるデザインの第3章に書いてあるのは、実はタイポグラフィのルール、この不自由さなんです(笑)。

    PIE:「不自由さ」こそが組版を美しく見せていた理由だったのですね。このテーマは高田雄吉さんの著作『タイポグラフィ・ベイシック』という本でもさらに知識を深められそうです。

    次回もよろしくお願いいたします!

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    📘PIE:告知です!

    2019年7月28日(日)梅田 蔦屋書店にて『アタマとカラダでわかるデザイン』出版記念トークイベントを開催します。ゲストにSTRiPES(ストライプス)代表の竹広信吾氏を迎え、両氏のグラフィック作品を交えながら、 書籍内容を詳しく掘り下げ、グラフィックデザインの本質に迫っていきます。皆さまのご参加をお待ちしております。

    ご予約など詳細
    https://store.tsite.jp/umeda/event/art/7337-1741410609.html

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