ノアンティクの夢物語 第2夜「メシャムパイプの夢物語」

貴族たちの間で、密かに噂になっていた”メシャムパイプ”がありました。
その”メシャムパイプ”は、海の中にある特別な工房で作られ、驚くべき特質があると囁かれていました。自分の顔とそっくりに彫らせたパイプを使用すると、吐いた煙が、陽の光に当たった海のようにキラキラと輝くのです。
しかし、彼らを魅了したのはそれだけではありません
同じ空間で、その特別な工房のメシャムパイプを吸った者同士のみ頭の中で会話をする事ができるのです。
初夏の昼下がり
煙の立ちこめる静かな部屋の中、2人の青年が頭上で混ざり合う小さな海を眺めていました。
手元に握られたパイプの顔は、しっかりと互いを見つめ合いながら、彼ら以外の誰にも聞こえることの無い秘密の会話を楽しんでいるようでした。
“メシャムパイプ”とは
メシャムという白くて軟らかい鉱物で作られたパイプ。
メシャムは、「海の泡」というドイツ語に由来する。
加工しやすいことから、美しい彫刻が施されている物が多い。長い時間使い続けることにより、純白から徐々に濃い琥珀色へと変化する。
text:まくらくらま
次回の更新は7月下旬の予定です。お楽しみに。