#今月の本屋さん 絵本のこたち(京都府京都市)
今年最後に紹介する本屋さんは、京都市伏見区にある絵本専門店「絵本のこたち」です。伏見区は京都中心市街の南側にあり、京都駅からバスで30分ほどの郊外にお店があります。
グーグルマップを頼りにたどりつくと、そこは一軒家でした。ここに本当に本屋さんがあるのかしら? 敷地の中を覗いてみると、母屋とは別に離れの建物に看板が出ていました。
引き戸を開けてみると、やわらかい照明と木のぬくもりのある本棚が現れました。
入口に積んである本。『ヘイトをとめるレッスン』(ころから刊)や『差別はたいてい悪意のない人がする』(大月書店刊)など、子どもたちに偏見のない大人に育ってほしいというメッセージが伝わってきます。
もちろん絵本屋さんですから、絵本がたくさんありますよ。レジ前にはクリスマス絵本が面陳されていました。
お店の奥にはどどーんと、インドのタラブックスが制作している絵本から、『モモ』『はてしない物語』(いずれも岩波書店刊)といった読み物までたくさんそろっています。
ねずみくんの絵本はなかったけど、ぼくのおともだちの絵本『だ~れだ?』はあったよ。
店長の熊谷聡子さんにお話を伺いました。熊谷さんは、以前は出版社で働いていました。退職後は、子育てをしながら地元の小学校の図書館で図書ボランティアをされてきました。図書分類法であるNDCに基づいて、きちんと図書館の本棚を整理していくと、図書委員の子たちがキャッチボールをして遊んでいた書庫同然の図書室に、子どもたちが並ぶようになったそうです。やっぱり子どもに本は必要なんだな、と熊谷さんは感じていました。
一方、今は本屋になったこの建物は、長年大事に使ってきましたが、雨漏りなどもしていたため取り壊すか悩んでいました。近所に本屋がないことも不便に感じていた熊谷さんは、この離れを本屋として改装することを決意。2018年2月に「絵本のこたち」をオープンしました。
出版社で働いていた時から、毎日新刊が来て、毎日返品する本屋さんは大変だなあ・・・と思っていたのですが、堀部篤史さん(京都・誠光社店主)の本を読んで、「返品をしないでよい本屋のやりかたがあるんだ!」と、本の仕入れのことなど参考にされたそうです。
ところで店内にはなんとギャラリースペースもあります。
このときは「京極夏彦のえほん遠野物語」シリーズ(汐文社刊)の『おまく』(絵:羽尻利門)の原画展を行っていました。「おまく」とは人が死を迎えるとき、魂が空を飛び、縁者へ死を告げることを言うそうです。すごくこわい! でもついつい気になって購入。
「こわがることを、こわがらないでほしい」という熊谷さんの思いから、店内ではこうした遠野物語関連本や『やねうらべやのおばけ』(作・絵:しおたにまみこ 偕成社刊)など、様々な「こわい」絵本を紹介しています。
それにしても、かつての離れが大変身ですね。熊谷さんのお話を聞いていると絵本選びの引き出しが増えていくので、ついついたくさん絵本を欲しくなってしまいました。
ゆっくり絵本を選ぶことができるので、ぜひ親子で訪れてみてください。
絵本のこたちTwitter:
https://twitter.com/cotachi_books
絵本のこたちHP:
(文・写真:PIE 三芳寛要 撮影日:2021/11/20)
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