ノアンティクの夢物語 第9夜「フェーヴの夢物語」

年が明けた、とある夜。
深い深い闇の中で微かに甘い焼き菓子の匂いが漂ってきたら、それはきっとゴーストたちのガレット・デ・ロワ。
大叔母、メイドに執事、見捨てられて自殺した花嫁…
青く輝く森の中、影に溶けるように建てられたこの大きな幽霊屋敷には、沢山のゴーストたちが住み着いている。
そんな彼らは1年に1度だけ、特別な”ガレット・デ・ロワ”を作ることができる。
特別なガレット・デ・ロワの中には魔法のフェーヴが入っており、当たったゴーストは1年の間、そのお屋敷の中でだけ生き返ることが出来るのだ。
みんなが期待に胸を膨らませるなか、今年の大当たりは、43年前に毒を盛られて亡くなった坊ちゃんだった。
光り輝くフェーヴを手に持つと、透けていた体が少しずつ熱を持ち始めた。
坊ちゃんは嬉しそうにガレットを平らげ、今年1年をどう過ごそうかと考えているのであった。
“ガレット・デ・ロワ&フェーヴ”とは
新年の幸運を願うフランスの伝統菓子
キリストの生誕を祝って、東方の三博士(三賢王)が礼拝に訪れた日とされる公現祭の日に食べる。
フランス語で「王様達のお菓子」を意味する。
切り分けたお菓子の中にフェーヴと呼ばれる2~3cmほどの陶器人形が入っており、当たった人はその日限りの王様・女王様としてみんなに祝福される。
text:まくらくらま
次回の更新は2月中旬の予定です。お楽しみに。