ノアンティクの夢物語 第10夜「チョコレートモールドの夢物語」

愛の守護聖人ヴァレンチノ司祭が処刑された2月14日はバレンタインデー、すなわち「恋人の日」。
海底にたたずむ大邸宅、オンディーヌ家には様々な海の生き物が仕えている。
バレンタインデーが近づくにつれ、メイドたちの間では想い人にどんなバレンタインカードを渡そうか、恋人からプレゼントは貰えるだろうか。連日、恋の話で持ち切りだった。
そんなある日、タコ足のメイドはとある話を聞く。
なんでも、遥か遠い東の国ではバレンタインにチョコレートを渡す文化があるらしい。自分の恋心を閉じ込めたチョコレートを片想い中の人魚のコックにプレゼントすれば、きっと喜ぶに違いない。
様々な形のチョコレートがあることを知った彼女は、自分の心臓を取り出し、チョコレートモールドと呼ばれる型から作ることを思いついた。
「正真正銘、私のハートをプレゼントするわ。これできっと想いが伝わるはずよ。」
その禍々しいチョコレートがどのような結果を招いたかは誰も知ることは無かったがタコは心臓を3つ持っているため、彼女は今日も元気に働いている。
“チョコレートモールド”とは
19世紀、産業革命が発展し飲み物としてヨーロッパ全土に広まっていたチョコレートが固形のものへと変化した。その時期、「チョコレートモールド」と呼ばれるチョコレートを作るための型も多く流通した。素材はブリキから石、金属など様々。2枚の型を合わせるため、クリップが付属していることが一般的。花や木の実、猫やサンタクロースなど個性豊かな様々な種類が見られるがイースター用のウサギや羊のモチーフが多い。
text:まくらくらま
次回の更新は3月中旬の予定です。お楽しみに。