ノアンティクの夢物語 第14夜「博物画の夢物語」

ネイビーのカバーに箔押しされた少年のロゴマーク。
一見どこにでもあるような博物図鑑のタイトルは「賑やかな博物誌」【The lively natural history】。
谷を超えた向こうに小さな版画工房がある。魔法を使う複数の少年たちがそこで1冊の不思議な図鑑を作り上げている。
図版を画く者、版を彫る者、インクをつめる者、刷る者、そして彩色する者……細かく分けられた役割のなかで、各々がその本に「とある魔法」をかけるのだという。
ページを捲ると蝶や植物、魔法生物から人物までジャンルに関係なく美しい版画がまとめられている。
銅版画の繊細な線で描かれた、まるで本物のようなポーズ、鮮やかな色彩。つい時間を忘れて見とれてしまいがちだが、この本を眺めるときには十分な注意が必要だ。
少年たちの「とある魔法」により、この図鑑に描かれる動物や植物はみんな命を宿している。うっかり紙の中から跳び出してきたり、紙の中で共食いをはじめてしまうこともある。
何よりも大切なのは、その図鑑に夢中になりすぎて自分自身が紙の中の世界へ入り込んでしまわないようにすることだ。
“博物画”とは
図鑑絵とも呼ばれ、動物・植物・鉱物などの観察対象を細かく記録するために描かれた絵である。16世紀大航海時代に博物学と共に発展した。
まだ写真が発明されていない時代のため主に木口木版、銅版、石版などの技法で印刷され、1枚ずつ手彩色で色付けされている。
text:まくらくらま
次回の更新は7月中旬の予定です。お楽しみに。