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    KLOKA 矢島沙夜子さんインタビュー 後編

    KLOKA 矢島沙夜子さんインタビュー 後編

     

    工房でアイデアを形に

     

    −KLOKAさんの他のお仕事の話も伺います。レシピ開発やグラフィックデザイン、店舗デザイン、映像など幅広く手がけられていますが元々はどのようにビジネスが始まったのでしょうか。

    一番最初はグラフィックデザイン事務所でした。代表がフリーで空間デザインもやっていて、初期に私が入りその頃はショップのデザインばっかりやっていました。デザインとショップ周りのグラフィックという感じで。私がその頃傍でアーティスト活動をやっていて、その繋がりでお声がけいただいてインスタレーションの依頼を会社で受けるようになって、その頃からクライアントワークだけでなく作家的な仕事も受けるようになっていき、ディスプレイやインスタレーションなど大きい空間の作品を一緒に発表するようになりました。それがどんどん広がって、プロダクトを作らない?という感じでブランドとして何かをやり始めたのがもうかれこれ15年ぐらい前です。私自身、気が多くいろいろやってみるタイプで、プロダクトや写真、ビジュアル、映像とどんどん広がっていって、仕事内容も丸々何かやってほしいという依頼が結構増えました。例えば、クリスマスツリーを作ってくださいというお題があっても、そこに付随する物語やショップのコンセプト、デザイン、ビジュアル、映像、プロデュースなど、トータルで見ることになる。そういう仕事が増えて、それを自分たちで表現するようになりました。上の階に工房があるのが結構大きくて、そのジャンルのエキスパートが集まっているので何でも作れます。3Dプリンターを扱える人やプログラミングができる人、ガラス工芸ができる人、細かいミニチュアを作れる人などがいて、アイデアを出したときに気軽に工房で作れるのが表現の幅に繋がるのかなと思います。

     

    −このビル全体がKLOKAさんの事務所なんですよね。

    ここに越してきたのは1年ちょっと前で、以前は西麻布に広大な事務所兼地下工房がありました。お店やりたいなという話が出てからいろいろ探して、今の場所に全部移設して、1階をお店にしました。

     

     

    物語を追い続ける

     

    −矢島さんは当時どういうアーティスト活動をされていたのですか?

    現代美術というかミクストメディアというか。学校を卒業してすぐの頃で、木工や布、映像を使って一つの小屋を作りそこで生活している人々を描く作品を最初に作りました。洋服を作ってその人たちのパフォーマンスをしてみたり。その頃から何か物語みたいなものを追い続けていたのかなっていう感じはします。

     

    −映像やグラフィック、ブランディング、設計などもされていますが、インスピレーションの元はありますか?

    私は圧倒的に幼少期の活字、本からですね。もちろんアニメやゲームも好きだったんですけど、やっぱり活字は深度が深いし、想像できる。一人っ子だったのもあるのかもしれないですけど。その世界をずっと咀嚼し続けるというか。そうすると夢にまで見て、匂いがするような、触れるような気がしてきて……という活字体験が今でも何となく礎になっているような気はします。あのとき想像したあの世界に戻りたい、入りたい、みたいなのはありますね。

    −たしかに活字は自由に想像ができますね

    映像や映画ももちろん大好きですが、原体験になっているのは絵がないものです。

     

    −今でも活字を読み直したり、新しいものを取り入れたりしていますか?

    やりますね。幼少期のときみたいに永遠の時間を費やすことはできないんですけど、架空の世界を描いているものはやっぱり結構好きで、最近は中国SFとかが好きです。例えばテッド・チャンとか、中国だけどちょっと中国じゃないっていうか、外から見た中国のような描き方が面白い。その国らしさを外から見たり、アラビアンナイトをモチーフに現代のSFに落とし込むとか、そういう面白さも感じて読んでいます。でも昔よりも、これ私だったらどうやるかなとか考えちゃう。

     

     

    一次情報に触れる

     

    −矢島さんが持っている世界観を築いていくために普段から行っていることはありますか。意識的に何か取り入れようとか、旅行に行こうとか。

    いろんな面白いものが溢れているじゃないですか、現代って。楽しませようと思えばいくらでも楽しませられるっていうのは分かっていて、何かを表現しようと思ってもフィルターを何段階か経て作品が生まれてきている。例えば松の木に触ることは一次情報で、でも盆栽は誰かがそれを別解釈したもの。生えている木を触るとか見るとか、木の皮をめくったらすごく変な虫がいたとか、そういう一次情報をすごく大事にしています。情報量が違うので。

     

    −自分で直に体験して感じるのですね。

    別にそうじゃなくても生きていけるし楽しいですけど、なるべくそういうことをするようにしないと、いつの間にかフィルターのかかったものだけで表現しようとするだろうなと思っているので、素材に一番近いものを見たり聞いたりするようにしています。

     

    −なるほど。それはクリエイティブの仕事をされている方にとって新鮮な情報ですね。

    そういうのも大事だと思います。例えば学生さんとか、これから何かしようっていう方はそういうものをとにかくいっぱい見ることも絶対大事じゃないですか。時代的にはコラージュが主流なんですけど、でもきっと気づいてないそういう情報があったりすると思いますね。この間久しぶりにプラタナスの木の皮をめくったら、ちっちゃい透明の妖精みたいな虫がびっしりいて、すごい綺麗だったんですよそれが。最初は虫って分からなくて、調べたらプラタナスグンバイっていう害虫だったんですけどめちゃくちゃ綺麗で。フクロウの顔みたいな、半透明でいっぱい、びたーってあった。ちょっと気持ち悪いですけど、すごく綺麗だったんですよ。リールで出てきたら見るんですけど、それとはやっぱり違います。

     

    −それを美しいと思えるピュアさ。

    綺麗でしたよ、本当に。私もそんなに虫得意じゃないですけど自然物の驚異、虫の体とかすごいなってやっぱり思うんですよね。生物の造形には勝てないって思います。

     

     

    クリエイティブの仕事をしていて良かったこと

     

    −矢島さんご自身についてもお伺いします。話を聞けば聞くほどぴったりのお仕事をされていると思うのですが、クリエイティブの仕事をしていて良かったと思うことはありますか?

    ありがたいことに今、いろんな要素を詰め込めるものを体験できているのはすごく良かったと思います。どんな仕事をしていてもそれはできる気はしていて、私が選びたかったから選んだだけっていう感じはするんですけど。お店という場所はそういう意味でいろんな要素がある所なので、人も往来もあるし、音楽も流れるし、温度も感じるし食べ物も出てくるし、表現の幅があるものを選べたのがやっぱり面白いかなと思います。

     

    −ユニークな活動をされているKLOKAさんならではでしょうか。

    私のように、余計なことをくどくど妄想して、ディティールばかりを考えてものを作る人間はたぶん社内には少なくって(笑)KLOKA にはもっと理路整然とした、もの作りができるデザイナーが多いです。

     

    −これからチャレンジしてみたいことはありますか?

    ひと時の幻の体験をしてほしいと思っていて、さっきちょっと言いましたけど、ボートじゃないとたどり着けない施設を秘境に作って、オーベルジュみたいにして、その1泊、幻の体験をするのはちょっとやってみたいって思っています。帰れないみたいに思わせたいです。

     

    −新しいですね。

    絶対面倒くさいですけどね。そういう場所を作ったりしてみたいです。

     

     

     

    若い世代へのメッセージ

     

    −最後に、クリエイティブ職、デザイナーを目指している若者にメッセージをお願いします。

    何か好きと思ったらやってみたらいいと思います。言葉で言うのは簡単ですけどやっぱりこだわりを持つことは大切で、そのこだわりっていうか執着心ですかね。物に対する、そのしつこさみたいなものの集積が、私は自分の作品、作風なのかなって思っていて。大枠を作って理路整然と大きいところから決めてくっていうデザインのスタイルの方が多分主流だし、社会的に求められていると思うんですよ。でも私はどっちかというと逆で、ディテールの集積で世界を作る、デザインを考えるっていう手法をとっていて。実は昔学生時代にそれで怒られて。細かいとこばっかりやって、実際最後まで終わらなかったりするんで、そんなこと考えててもう結局何が作りたいのとか、出来上がってないとかっていう失敗を散々繰り返して。でも結局ディテールが思い浮かばないと、私は想像がつかなかった。なので、メソッドとしてはあまり良くないかもしれないですけど、突き詰めて、こだわり続けてると意外とそれも一つの形になるよっていうのは、実体験として生まれてるような気はします。

     

    −ご自身のやり方を信じて続けてきたんですね。

    それ以外ができなかったんですよね、不器用だったので。器用な方は多分そういうことはしないような気がするんですけど、皆さん自分のやり方があると思うので、やりたいって思ったり好きって思ったことにどのぐらいの熱量で向き合って執着できるかが結局大事なのかなという気はします。

     

    −突き詰めて今がある。そこが矢島さんらしいですね。

    そうですね。結局その作風になると思うので。間に合わないとか致命傷ですけど(笑)。

     

    −お仕事されてから実際間に合わないこともあったのですか。

    社会に出てからは泣く泣く、ガーッて終わらせて、こうじゃなかった、って思うものはやっぱりありますね。それで失敗して、それじゃないって言われたりしましたが、そこが抜けると結局自分の表現、大元になる部分が削られていって摩耗されてしまうので。時間配分の工夫ですかね。幸い今、自分で出しているものが多くて、クライアントのお仕事もやりますけど、大体どのぐらいやると自分はこだわり続けて元に戻ってこられないとか、自分の事はわかり始めているので、これはここまでって決めたりするようになりました。引き続きデザインの仕事に携わりつつ、世界観を育てていくというか、作家的なものの方が自分には向いているのかなと思っているので、そういうものを増やしていきたいなと今は思っています。

     

     

     

    ◯おまけ

    後日、バレンタイン期間限定イベント「The Utopian Hidden Mountains AT SHORAKUEN TEA SALON」のプレスカンファレンスにお邪魔して来ました。

     

    店内にそびえ立つ長さ3メートルの巨大な「チョコレート山脈」!火山、熱帯雨林、氷の湖、砂漠、山奥の隠れ里、高山地帯の6種類の異なる山から成るチョコレートでできた山脈で、それぞれの山には物語があります。

     

    山脈マップを見ながら好きな山岳地帯を選ぶと、店内の発掘員が真鍮で出来たハンマーとノミで山を発掘します。

     

    掘り出した山のかけらは瓶に詰められ、自走するようにプログラミングされたからくり人形が運んで渡してくれます。

     

    瓶には好みのタッセルやチャームを選んでつけることができるので、プレゼントにも喜ばれそうです。

     

    さらに、壁面の祠には、ひねるとホットチョコレートが流れ出る蛇口が!竹のコップに注いで好きなだけ飲むことができるそうです。

     

    ホイップクリームやアステカスパイス、シュガー、岩塩、オレンジリキュールなど、好みのトッピングで味を変えることもできます。

     

     

    小楽園ならではの、摩訶不思議な世界観に圧倒されました!

    (※本イベントは終了いたしました。)

    詳細はこちら

    https://www.shorakuen.com/shorakuen-valentine2024

     

     

    (おわり)

    撮影協力:KLOKA

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