『ブラックライトでさがせ!深海の不思議な生きもの』おしえて!えのすいトリーターさん 第3回 ブクブク王国とアチ!ヒヤ!王国に登場するチューブワームってどんな生き物なの?
深海の生きものたちって本当に不思議!
このページでは生物監修をお願いした、新江ノ島水族館のえのすいトリーターさんたちに、びっくりするような生物の生態や、深海についての知識を教えてもらいます
えのすいトリーター
八巻鮎太(やまきあゆた)さん
プロフィール
ちょっと変わった深海生物が好き。
縁あって学生時代から10年以上チューブワームに関わっています!
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「ブクブク王国」と「アチ!ヒヤ!王国」で出会ったチューブワームって、植物みたいに見えますが、動物なんですか? |
八巻
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そうです、チューブワームは動物なんですよ。その名前のとおり棲管(せいかん)とよばれる硬いチューブを作り、その中に入っています。普段は入り口から赤いエラだけを出していて、体全体が棲管から出てくることはありません。とっても深いところ(3000m付近)でも見つかっています。ブクブク王国に登場するサツマハオリムシもチューブワームの一種で、鹿児島湾などにすんでいます。 |
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えー!動物なんですね!どんなものを食べるんですか? |
八巻 |
うーん、どんなものを“食べる”のかっていうとちょっと答えに迷いますね。でもチューブワームにとって、硫化水素という猛毒の化学物質が“餌”とよべるものかもしれません。 |
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化学物質?毒が餌?いったいどういうことですか? |
八巻 |
実はチューブワームは口がないので、食べるというより、体表から体内へ直接取り入れるのです。ですから、“餌”は化学物質のようにとても小さなものでないとだめなんです。アチ!ヒヤ!王国に登場する熱水噴出孔からは、たくさんの硫化水素が噴き出しています。多くの生き物にとって猛毒の硫化水素ですが、チューブワームの体内に共生しているバクテリアにとっては、栄養を作るために必要な役立つ物質なのです。チューブワームは、その共生バクテリアが作ってくれた栄養を使い、生きています。そこで巡り巡って硫化水素がチューブワームの“餌”とも呼べるのかもしれないと言ったのですよ。 |
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へぇ~!チューブワームはものを食べないかわりに、バクテリアの力をかりて、硫化水素を栄養に変えちゃうってことですか!?びっくりです!! |
八巻 |
びっくりしますよね。でも硫化水素を栄養に「変える」というのはちょっと違って、硫化水素を「エネルギー源として使って」水中の材料から栄養を「合成する」という方が正確です。これを「化学合成」といいますが、チューブワームのように化学合成バクテリアと共生することで、硫化水素を利用している生き物たちからなる生態系を「化学合成生態系」と呼びます。つまり、ブクブク王国やアチ!ヒヤ!王国の仲間たちのことですね!新江ノ島水族館では、このような深海の特殊な生態系を世界ではじめて再現した「化学合成生態系水槽」もあるんですよ。 |
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なるほど、チューブワームがどんな生き物なのか、よくわかりました!新江ノ島水族館で会える「ブクブク王国」や「アチ!ヒヤ!王国」の仲間たちは誰ですか!? |
八巻 |
よくわかってもらえたようで、私もうれしいです!そうなんですよ。飼育はとっても大変ですが、新江ノ島水族館では、今回ご紹介したチューブワームの一種、サツマハオリムシの他、ゴエモンコシオリエビ、シンカイヒバリガイなどに会うことができますよ。深海低の環境を、みなさんに見てもらえるようにがんばっています! |
注・本情報は取材時の情報です。「サツマハオリムシ」、「ゴエモンコシオリエビ」、「シンカイヒバリガイ」の展示が終わっている場合もありますので、ご注意ください。最新の展示情報はえのすいHPをご確認ください。
取材:2020年5月28日