PIE International

    Welcome to PIE International website! Please select
    your country or region.

    We hope you will enjoy our Pretty,
    Impressive and Entertaining (=PIE) Books!

    #今月の本屋さん 蟹ブックス(東京・高円寺)

    #今月の本屋さん 蟹ブックス(東京・高円寺)

    老いも若きも様々なカルチャーが混在する東京・中央線沿い。その中でもライブハウスが多く、ロックの街としても知られる高円寺に、新たな文化の発信地となりそうな本屋さん「蟹ブックス」が誕生しました。店主は書店員として長年活躍し、著作『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出書房新社刊。略して「であすす」)などでも知られる花田菜々子さんです。

    蟹ブックスは高円寺の南口、新高円寺通り、高円寺ルック商店街を進んだところにあります。「ルック」ってなんだろう……古着屋さんが多いのと関係あるかな。

    ルック書店街を少し横に入ると、ありました、あまりに控えめすぎて話題になった「本」の看板。画面中央にありますが、見つけられますかね。これ、裏から見ると蟹のイラストになっているようです。

    階段で2Fに上ってドアを開けると、明るい店内です。緑がところどころにあって落ち着きます。『夜と霧』(みすず書房)や、武田砂鉄さん、ブレイディみかこさんの著作のような人文書と共に、『へいわとせんそう』(ブロンズ新社)、『ぼくは川のように話す』(偕成社)のような絵本が一緒に並んでいます。大人向けも子供向けも区別なく、強いメッセージを持つ本が紹介されています。

    入口すぐには香山哲さんの『ベルリンうわの空』が積んでありました。

    そしてその香山哲さんがイラストを描いた、蟹ブックスオリジナルのトートバックが置いてあります。カニがかわいい。販売する予定もあるそうです。

    店内中央にある本棚は可動式になっていて、トークイベントなどを行う際に端に寄せることができます。

    文芸書の棚の上には開店祝いの花束が並んでいました。おお、トーハン東京支店さんから…トーハン帳合なんですね。そのほか河出書房新社の代表・小野寺優さんと、大和書房さんからも。

    こちらは絵本の棚。しおたにまみこさんや、junaidaさん、藤岡拓太郎さんなど現代作家さんの作品が面になっている中に『星の王子さま』『モモ』といった定番の物語もありました。

    世界の室内装飾や喫茶店、大阪の建築など、街で出会うものを楽しむ本が揃っている本棚に、『まちの文字図鑑・番外編:まちで出会った かわいいあのこ』(大福書林)が積んでありました。この本の著者の一人、松村大輔さんは、PIEのブックデザイナーでもあります。

    漫画の棚。『フジモトマサル傑作集』(青幻舎)や『三拍子の娘』(DU BOOKS)などが面になっています。青色が目立つ、坂月さかなさんの『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』『星旅少年』も差さっていてうれしい。

    台湾の作家、高妍さんの『緑の歌』(ビームコミックス)が面になっているので、漫画の棚かなと思ったら、細野晴臣さんや松本隆さんについての本、シティポップについての本など、『緑の歌』の世界を中心として広がる音楽の棚になっているのに気づき、ちょっと泣きそうになりました。まだ読んでない方は、ぜひ読んでみてください。本当に素敵な作品です。

    こちらはギャラリースペース。このときはお店のスタッフのお一人でもある當山明日彩さんの作品が紹介されていました。壊れたヘッドホンや長年使った鉛筆削り、コーヒーカップなどを型として特殊な粘土素材で作られています。「記憶」をテーマとした作品群で、いずれは捨てられてしまうような使い道のないものでも、そこに残った思い出の一部を形として取り出したようで、魅力的な作品です。これらの作品は購入することもできます。

    こちらは店主の花田菜々子さん。実は2016年にも #今月の本屋さん でインタビューしています。そのときは東京・日暮里の「パン屋の本屋」の店長さんでした。その後HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE(2022年2月閉店)の店長を経て、ついに自らオーナーとなる蟹ブックスを開店することになりました。このあいだに、前出の「であすす」や『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』(河出書房新社)といった著作もされています。花田さんにお話を伺いました。

    ――なぜ高円寺で本屋を開店することにしたのですか?

    よい物件が見つかったということが大きいです。高円寺には文禄堂さんや、荻窪の本屋Titleさん、西荻窪の今野書店さんなど地域に根差した素晴らしい本屋さんが多く、そういう地域で開店することを最初はためらったのですが、逆にそうした本屋さんがあるからこそ、差別化としてコアな選書に振り切れるという解放感があります。

    ――ギャラリーやイベントもできるのですね。今後はどのようなことをしていきたいですか?

    ギャラリーで展示するものは特にこだわっていません。謎の物体を展示してもいいですし、写真を展示してもいいと思います。クリエイターさんとお客さんの橋渡しをしていきたいと考えています。

    イベントスペースは10名から20名が入れる程度であまり多くはないですが、人数が少ないのがいいと思っています。あまり多いと、あちこちに目を向ける必要がありますが、少ないことで「みんなで話そうよ」という雰囲気が生まれます。哲学者の永井玲衣さんが著書『水中の哲学者たち』の中で、哲学対話の活動をされているのを読んで、時間をかけて話し合いをできる場所っていいなと感じていました。

    開店準備中は不安もあり大変でしたが、こうしてお客さんに来ていただくことで、出会いや対話が生まれ、そこに生命が生まれるかのように感じます。私はこの瞬間が好きです。

    花田さん、素敵なお話ありがとうございました。

    直近ではトークイベント「調査する人生 岸政彦×石岡丈昇」(9月6日)を開催。web岩波〈たねをまく〉の連載『調査する人生』のための公開対談だとか。今後も見逃せないイベントが続きそうです。

    こちらは香山哲さんデザインのオリジナルブックカバー。欲しい。

    今回は、どの棚からも言葉にはならないメッセージが伝わり、本棚を通じて書店員さんと会話をしているような気になりました。スタッフのみなさんによる、とことんつきつめた選書の結果なのだと思います。本屋さんそのものが、時代や地域のメッセージを発信するメディアなのだと体感できるお店に、ぜひみなさんも足を運んでみてください。

    蟹ブックスHP:https://www.kanibooks.com/

    (文・写真:PIE 三芳寛要 撮影日:2022/8/31)

     

    この他の本屋さんの記事を見るには・・・

    #今月の本屋さん 連載トップ

     

     

     

     

    シェアする

    このサイトは、サイトを改善するためにCookieを利用しています。
    お使いのブラウザにてのクッキーの有効/無効を設定いただけます。
    サイトを利用することで、Cookieの使用に同意するものとします。
    プライバシーポリシー

    OK